東京・春・音楽祭 2024が開幕! メイン会場である東京文化会館に加え、東京国立博物館や国立科学博物館、東京都美術館など上野一帯の文化施設でも演奏会が開かれます。20周年、例年にもまして華やかに催される同音楽祭ですが、このレポートでは、開幕の約3週間前から進められた、普段見ることのできない準備の模様をお届けします。
2月26日
上野の街が「東京春祭」カラーに染まり始める…
冬の寒さも残る2月下旬、音楽祭の幕開けに向けて飾り付けがスタート。メインストリートの上野中央通りや、“アメ横”の1本隣、活気あふれる商店が立ち並ぶ上野中通り商店街などに約140枚のペナントが吊り下げられました。上野の日常の風景が少しずつ、表情を変えていきます。
3月1日
区民の足、コミュニティバスもラッピング!
上野のある台東区内を循環するコミュニティバス、「めぐりん」。レトロで可愛らしいルックスで区民に親しまれています。そんな「めぐりん」も、東西ルートを走る車体が「東京春祭」仕様にラッピング。街中に音楽祭の訪れを知らせます。
3月4日・5日
東京文化会館が大変身!
音楽祭のメイン会場、東京文化会館。JR上野駅の公園口をでてすぐ、まさに上野公園の“顔”といえます。そんな東京文化会館が、開幕約10日前の二日間で大変身! 毎年おなじみ、西洋美術館側の入口の柱巻や三角ペナントの設置が、職人さんの手によりてきぱきと行われました。
加えて、今年は20周年スペシャルで、上野駅側の入口前の地面に桜と音符のシールがちりばめられ、上部のガラスも装飾。普段はシックなたたずまいの東京文化会館が装いを新たに、華々しい“顔”で訪れる人々を出迎えてくれます。
3月9日・10日
銀行のロビーにワーグナーの世界が出現⁉
バイロイト音楽祭との提携公演「子どものためのワーグナー」は、「東京春祭 for Kids」の目玉企画。長大なワーグナーオペラを約70分にギュッと凝縮、子どもでもわかりやすいように再構成され、キャストには国内の実力派の歌手陣が迎えられるなど、本格的なオペラ体験ができます。そして、その会場は…なんと銀行のロビー!
大手町にある三井住友銀行 東館 ライジング・スクエアの1階「アース・ガーデン」。多くの銀行員が行き交うビルの一角に、壮大な悲恋物語、ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》の舞台が2日間かけて作り上げられました。
INTERVIEW
音楽祭の陰の立役者・芦田尚子事務局長
こうした裏側の準備を行うのが、音楽祭実行委員会の事務局の皆さん。そのトップ、事務局長の芦田尚子さんに、東京・春・音楽祭 2024の開幕に向けた意気込みを伺いました。
「コロナ禍では、急な感染拡大や渡航制限など、常に何かを気にしながら動かざるを得ませんでしたが、そういった制約ぬきに音楽祭を作っていくことに集中できるのが大きな違いです。そして、節目の20周年。これは子どもが生まれてから、成人して独り立ちするまでの年月ですよね。音楽祭も同様だと考えています。これまでのアニバーサリーとも違って、ゼロから立ち上げ、続けてきたものがさらなる未来につながっていくための、大きな第一歩になると思います」
2005年、「東京のオペラの森」としてスタートした本音楽祭。創設から携わり続けてきた芦田さんが考える、「20年で変わったこと」は。
「第1回は東京文化会館の公演のみで、上野の街の皆さんにとってはどこか他人事のような感覚だったように思います。しかし、徐々に交流を深めていき、ミュージアム・コンサートや街中でのコンサートも行うようになった結果、『この時期だからそろそろこれをやらないとね!』とお声掛けいただくなど、積極的に参加してくださるようになりました。今では東京・春・音楽祭は、“街の人のもの”にもなってきていると思います。
また、20年という年月の間に、出演するアーティストの皆さんも変化します。最初はオーケストラの後ろで演奏していた人が、今やコンサートマスターになっていたり。そういった人たちが春になると上野に戻ってきて、互いに交流を深める。多彩なアーティストが集う交差点であり、帰ってくる場所にもなってきているのではないかと考えています」
3月15日
鏡開きとともに華々しく開幕!
そしていよいよ3月15日、約1ヵ月にわたる祝祭がスタート! 巨匠、ルドルフ・ブッフビンダー氏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会の第一夜で幕を開けます。同日のお昼過ぎには、20周年&開幕記念として鏡開きも行われ、ブッフビンダー氏の他、「子どものためのワーグナー」の監修・再演 演出を務めるカタリーナ・ワーグナー氏(バイロイト音楽祭総裁)、実行委員長の鈴木幸一さんらが出席。賑やかに音楽祭の始まりを祝いました。
東京・春・音楽祭 2024は4月21日まで開催。一帯が「東京春祭」ムードに染まった上野の街も楽しみつつ、国内外から集った一流アーティストの公演に足を運んでみてください。
取材・文:編集部