壮麗極まりない声の饗宴だ。16世紀中葉の英国を代表する作曲家の一人、ジョン・シェパード(1515頃〜58)の「ミサ・カンターテ」をはじめとする宗教曲集。6声を基本に時に2声まで自在にテクスチュアを変化させ、一方でミサ曲では各章に共通主題を行き渡らせ曲に大スケールの統一感をもたらす。微視と巨視が両立するその世界を、創立50周年を迎えるタリス・スコラーズが、老舗の読みの深さと変わらぬ鮮度の高いハーモニーで鮮やかに描く。ア・カペラの美点が存分に生かされ、細部まで構造的に聴きこむも良し、引いては打ち寄せるポリフォニーの波に洗われ、ひたすらチルアウトするもまた良し!
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2023年12月号より)
【information】
CD『シェパード:ミサ・カンターテ/タリス・スコラーズ』
シェパード:ミサ・カンターテ
ピーター・フィリップス(指揮)
タリス・スコラーズ
Gimell/東京エムプラス
XCDGIM 053 ¥3300(税込)