第33回国際古楽コンクール〈山梨〉鍵盤楽器部門第1位受賞記念
加藤美季 フォルテピアノ・リサイタル 〜イギリス式ピアノに魅せられて〜

ベートーヴェンを魅了したピアノで光り出す古典派のピアノ曲

 モーツァルトやベートーヴェンが生きていた18世紀末から19世紀初頭、彼らが使っていた〈ピアノ〉は現代のグランドピアノではなく、様々な工房が作っていた〈フォルテピアノ〉だった。フォルテピアノの響きはそれぞれに個性的。どの楽器を選び、どの作曲家の作品を演奏するか、というピアニストたちの判断によって、コンサートは千変万化する。

 第33回国際古楽コンクール〈山梨〉の鍵盤楽器部門でフォルテピアノ奏者としては初の第1位を獲得した加藤美季が、ヤマハホールで〈イギリス式ピアノ〉を使ってリサイタルを開催する。加藤は東京藝術大学楽理科、同大学院古楽科フォルテピアノ専攻を修了。小倉貴久子、大塚直哉などに師事し、アウトリーチなどでも積極的に活動している。

 今回使われるのは「ジョン・ブロードウッド・アンド・サンズ」というイギリスのピアノ・メーカーによる1800年頃の作(2020年 太田垣至修復)。ブロードウッド社といえば、1818年にベートーヴェンに6オクターヴの鍵盤を持つピアノが届けられ、亡くなるまで側にあったことで知られる。晩年の様々なピアノ曲の傑作は、ブロードウッドによって生み出されたものとも言える。

 このコンサートではベートーヴェン「ヴァルトシュタイン」ソナタに加え、同時代のクレメンティ「クラヴィーア・ソナタ ロ短調」などが演奏される。クレメンティ作品は現代ではあまり演奏されないが、モーツァルトやベートーヴェンと同じくらい人気のあった作曲家で、その作品を当時のフォルテピアノの響きで聴くというのは貴重な体験となる。作品の魅力を再認識させたい、という加藤の意気込みに期待したい。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年12月号より)

2022.12/28(水)19:00 ヤマハホール
問:1002(イチマルマルニ)03-3264-0244 
https://www.1002.co.jp