室内楽の神髄“弦楽四重奏”をテーマに
30年以上にわたり福井県越前市(旧武生市)を中心に開催されてきた武生国際音楽祭。地元に密着した演奏会、ワークショップ、アカデミーなども充実しているが、大きな特色は現代作品の紹介と演奏だろう。多くの同時代作品が演奏され、ここでの初演から世界に発信していく作品も多数。「世界から武生へ、武生から世界へ」の音楽祭スローガンのとおり、現代芸術の拠点の役割を担っているのである。
今年は9月4日から11日まで、テーマは「弦楽四重奏の現在(いま)」。国内外の演奏家たちによる多様な組み合わせで、幅広い時代の名作を聴かせる。海外の一流演奏家の招聘も3年ぶりに実現予定で、特に目を引くのはアルディッティ弦楽四重奏団。1974年の創設以来、現代音楽のスペシャリストとして世界の最先端を走り続けてきた別格の存在だ。9月6日の単独公演でクセナキス、リゲティ等を披露するほか、3つのコンサートにも一部出演予定で、今年の中心的存在となる。ほかにも弦楽四重奏曲を中心として、計50名の音楽家(演奏家41名、作曲家9名)が縦横無尽に絡み合うような多彩なプログラムが並び、興味が尽きない。
音楽監督を務める作曲家の細川俊夫は、開催に寄せて「私は、音楽がただの『気晴らし』や『慰め』のためではなく、もっと人間性の豊かさや高貴さを深く表現し、それを守っていくための大切な表現形式であると信じています」との言葉を紡いでいる。その高邁な精神を「武生」で体験し、深く心の糧としたい。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年8月号より)
2022.9/4(日)~9/11(日) 越前市文化センター、越前市いまだて芸術館 他
問:武生国際音楽祭推進会議事務局0778-23-5057
http://takefu-imf.com
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。