時空を超える名曲で語られる物語、再び!
17世紀から生き続ける不老不死のカストラートが400年の音楽史を辿る。カウンターテナー藤木大地主演の歌劇《400歳のカストラート》が2年ぶりに再演される。2020年2月に初演された東京文化会館のオリジナル・プロダクションで、ルネサンス末期から現代まで20曲以上の楽曲を用いてオムニバス形式で描く音楽ドラマ。企画原案と選曲は藤木大地。脚本と演出・美術に平常(たいら・じょう)、音楽監督・作編曲は加藤昌則。
去勢手術と厳しい訓練によって超絶技巧を獲得した男性高音歌手であるカストラートたちは17〜18世紀のオペラ界のアイドル的存在だが、この舞台が焦点を当てるのは、そんな華やかさよりも、声の女神によって永遠の生命を与えられたカストラート「ダイチ」の恋と孤独、戦争の傷痕、そして声と音楽を巡る葛藤だ。藤木の独壇場である抒情的で丁寧な歌が、それを巧みに描き出す。演奏は音楽監督・加藤のピアノのほか、成田達輝、周防亮介(以上ヴァイオリン)、東条慧(ヴィオラ)、上村文乃(チェロ)と精鋭が集った贅沢なアンサンブル。
初演同様、俳優の大和田獏と大和田美帆父娘の朗読劇が、400年の時空を超えた物語へいざなう。プロの舞台人だから、劇場外の出来事はシャットアウトして眼前の仕事に専心できるのかもしれないけれど、2年前の舞台の直後に痛切な悲しみに見舞われた2人にも、心からのエールを送りたい。今回もまた、素敵な舞台を期待しています。
文:宮本明
(ぶらあぼ2022年4月号より)
2022.6/26(日)15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp
他公演
2022.7/3(日) 愛媛/西条市総合文化会館(0897-53-5500)
7/10(日) 三重/四日市市文化会館(059-354-4501)