飯森範親(指揮) 東京交響楽団

華麗かつ壮大な2つの音楽の“物語”

 飯森範親と東京交響楽団によるポポーフの交響曲第1番の日本初演が大成功したのは記憶に新しいところだが、新年早々には再びその顔合わせでロシア・ソヴィエト音楽のコンサートを開く。
 演奏会はリムスキー=コルサコフの名曲「シェエラザード」で始まる。欧州ツアーも成功させた東京交響楽団の名技が開幕早々から楽しめるわけだ。しかしこの曲はふだんならメインのはず、ではその後に何を演奏するのか? ここで飯森が選んだのは、めったに演奏されないプロコフィエフのカンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」だ。なるほど並べてみればわかる、このプログラムは片やアラブの囚われの姫の、片やノヴゴロドの英雄の、2つの“音楽で聴く物語”を集めたものなのだ。
 エイゼンシュタインの映画のための音楽によるカンタータは支配からの解放を求める凄絶な戦闘から鎮魂、そして栄光を描き出す。ソヴィエトに帰国したプロコフィエフの充実した作品の、ほぼ全編でオーケストラに負けない主役として活躍する合唱にはぜひ注目してほしい。来る新シーズンに創設30周年を迎える東響コーラスには大きな期待がかかる。そして第6曲で印象的な祈りを歌う独唱にはエレーナ・オコリシェヴァを迎える。ボリショイ劇場で活躍する彼女を得たことで、ドラマはより深みを得ることだろう。
 この充実した顔ぶれが描き出す“物語”で、飯森範親と東京交響楽団は再び我々を驚かせてくれるはずだ。
文:千葉さとし
(ぶらあぼ 2017年1月号から)

第95回 東京オペラシティシリーズ
2017.1/21(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/