ジャン=ニコラ・ディアトキン(ピアノ)

“歌”から学んだ異彩のピアニズム

 「今この瞬間に溢れ出る私の音楽と、あなたの感性が共鳴できたなら、その喜びは音色となって、我々の人生をいっそう彩るだろう」。パリ出身の異彩のピアニスト、ジャン=ニコラ・ディアトキンは公言する。
 高名な医師の一家に生まれ、6歳でピアノを始め、「他者への献身」の家訓を、芸術家として継承。クラウディオ・アラウとナディア・ブーランジェ、二大巨匠の弟子たちに師事した。そして、「歌手の演奏を聴くことを弟子に勧めた」というショパンに倣い、まず歌の伴奏ピアニストとしてキャリアをスタート。声楽の表現法を吸収する一方、作曲家ごとの語法の理解と研究も進め、独自のピアニズムを確立した。
 来日リサイタルでは、ラヴェル「夜のガスパール」とシューマン「謝肉祭」を軸に、ラモー「クラヴサン曲集第1集」から「プレリュード」「サラバンド」、ドビュッシー「映像第1集」から「水に映る影」「ラモー讃歌」、そして「喜びの島」を添えたプログラム。緩やかにリンクする各曲から、聴く者の魂を掴む響きが紡ぎ出される。
文:笹田和人
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

5/10(水)19:00 すみだトリフォニーホール(小)
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース
  03-6908-8977
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