川田知子と須田祥子。名手二人の二重奏アルバムは、これが『スターライト』に続く2作目。今作では前半に、ワイル「ユーカリ」に始まる20世紀のタンゴ系名曲が並ぶ。荒井英治の編曲は、2人のクラシカルな技巧を存分に生かしつつ原曲のテイストも失わない絶妙なバランスだ。後半のロッラやモーツァルトに自然につながってゆくのは、中央に置かれたマルティヌーのスパイス効果もある。が、それ以上に、各々の美麗な音色を高い同質性で調和させてゆく2人のアンサンブルが、時代も文脈も異なる作品を共通の色合いで包んでゆくからだろう。どこか「ユーカリ」で歌われる夢の国のような。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2024年3月号より)
【information】
CD『ユーカリ〜ヴァイオリンとヴィオラの二重奏〜/川田知子&須田祥子』
ワイル(荒井英治編):ユーカリ〜タンゴ・ハバネラ〜/ビジョルド(荒井編):エル・チョクロ/マルティヌー:3つのマドリガル/ロッラ:3つの二重奏曲第3番/モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 K.424 他
川田知子(ヴァイオリン)
須田祥子(ヴィオラ)
マイスター・ミュージック
MM-4526 ¥3520(税込)