トリトン晴れた海のオーケストラ 第10回演奏会 ベートーヴェン・チクルスⅤ「第九」

豪華声楽陣も魅力、指揮者なしで作り上げる「第九」

 中央区晴海に位置する第一生命ホールを拠点とする「トリトン晴れた海のオーケストラ」。2015年6月の発足以来、指揮者なしでポジティブなエネルギーを発散する快演を重ね、着実にファンを増やしてきた。その中心にいるのはコンサートマスターの矢部達哉。東京都交響楽団のリーダーである彼が柱となり、気心の知れたメンバーとともに、自発的かつ積極的な演奏を実現している。

 18年からベートーヴェン・チクルスを開始、生誕250年の20年「第九」で楽聖と楽団の大きな節目に…となるはずだったが、新型コロナウイルスによる制限のため中止にせざるを得なかった(代わりに別演目で配信を行った)。その1年5ヵ月後となる今年11月、今度こそ「第九」が実現する。今回は第一生命ホール開館20周年、同楽団の公演第10回と、昨年とは違う節目も重なり、記念にふさわしい場となる。

 公演事情とは別に、そもそも“指揮者なしの第九”自体が偉業といえる。偉大な9曲の到達点にふさわしい表現を約70分維持し、合唱団と4人の独唱者とも緻密なアンサンブルを実現し、その上で巨大な世界を構築しなければならない。もちろんメンバーも曲をかたちにするという次元で満足する気はないはずで、全員がアンテナを張り巡らしながら、その工夫を忘れるほどの熱気を見せてくれるはずだ。

 独唱は澤畑恵美、林美智子、福井敬、黒田博、合唱は東京混声合唱団。ため息の出るような強力布陣がそろい、「晴れオケ」が2年越しで作り上げるベートーヴェンの神髄。永く語り継がれる公演になる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年11月号より)

2021.11/27(土)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
https://www.triton-arts.net