スター・テノールの最新作はリサイタルでの定番曲に、知られざる名曲を加えて綴った珠玉のリスト・アルバム。ステージでも理想的なパートナーであった伴奏者のドイチュが大の“リスト推し”(彼にとって最大のアイドルだとか)だけあって選曲センスが光り、ヨナスを導き、ライナー解説の執筆も担当しているので、ぜひ対訳付きの国内盤をお薦めしたい。シューベルトやシューマンの歌曲でお馴染みのテキストもあれば、同じゲーテの詩に異なる視点から作曲した2稿の聴き比べや、ワーグナーのあの楽劇から拝借した旋律など、リスト歌曲の魅力を再発見できる一枚。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2021年11月号より)
【information】
CD『リスト:歌曲集/ヨナス・カウフマン』
リスト:ぼくの歌には毒がある、よろこびにあふれ 悲しみに満ち、トゥーレの王、ラインの美しい流れの、ローレライ、3人のジプシー、ペトラルカの3つのソネット、たおやかな睡蓮、わたしは死んでゆきたい、天から下りてくるおまえは、すべての山頂に安らぎがある 他
ヨナス・カウフマン(テノール)
ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)
ソニーミュージック
SICC-2235 ¥2860(税込)