徳永二男と「四季」&「チャイコン」を共演!
エレクトーン奏者・渡辺睦樹が、楽壇生活50年を迎えたヴァイオリンの徳永二男とともに、ヴィヴァルディ「四季」とチャイコフスキー、ヴァイオリン協奏曲2作を弾く。
「ソリストの呼吸を、指揮者を通してオーケストラの各メンバーに伝えるという媒介がひとつ減るエレクトーンなら、アンサンブルにより一体感が生まれて、密度の高い音楽をお届けできると思っています。それに、ヤマハホールのような親密な空間で、協奏曲を弾く徳永さんの超絶技巧を間近に見聴きできるのは滅多にない体験のはずです」
ジャンルは違えど、子供時代から徳永は憧れの音楽家だった。
「子供の頃、うちにメンバー全員の顔写真が載ったN響の冊子があって、しょっちゅうそれを眺めていました。その徳永さんと一緒に演奏できるなんて! とても楽しみです」
エレクトーンの場合、原曲をどのように編曲するかは大きなポイントだ。
「僕はまずオーケストラのお手本をたくさん聴いて、自分だったらどう弾くか、どういうサウンドで鳴らすかシミュレーションしてから楽譜を書きます。先に音色=レジストレーションを作ってから書くんですね。レジストレーションの都合で、どの鍵盤で弾くのかも変わってくるのと、何のイメージもないまま弾いてしまった第一印象が手にインプットされるのが嫌なんです」
バロックの代表曲「四季」とロマン派の名曲チャイコフスキー。もちろんそれぞれの音楽の様式に則ったうえで、エレクトーンならではの表現の違いも加わる。
「バックが弦楽合奏の『四季』は、ソロとオーケストラが溶け合っています。ヴァイオリンの持つ弦楽器らしさを増幅するのがオーケストラの役割だと思うので、なるべく馴染みの良い音を目指します。チャイコフスキーは、逆にあまり馴染ませすぎずに、弦楽器パートの質感を少し落としたほうが面白いかもしれません」
質感を落とすというのは、弦の擦れる音だとか、ヴィブラートのニュアンスだとかを控えめにすることだそう。今のエレクトーンではかなりリアルな再現が可能なのだが、できるからといって何でもやってしまわないのも大事なポイントなのだという。
「エレクトーンが他の楽器と音楽面で共存できることを、広く認識してほしい」と渡辺は言う。でもそれはたぶん、そんなに難しいことではない。とにかく一度耳を傾けてみよう。それが日本音楽界の重鎮との強力タッグによる、この協奏曲の夕べなら、クラシック音楽におけるエレクトーンの可能性が、なおのことよく理解できるはずだ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2016年8月号から)
エレクトーンと奏でるバイオリン協奏曲の夕べ
徳永二男(ヴァイオリン) 渡辺睦樹(エレクトーン)
9/6(火)19:00 ヤマハホール
問:1002(イチマルマルニ)03-3264-0244