石上真由子&中恵菜&佐藤晴真
——実力派トリオが團伊玖磨と諸井三郎の名品に光を当てる

左より:石上真由子 ©Masatoshi Yamashiro/中 恵菜 ©Junichiro Matsuo/佐藤晴真 ©Seiichi Saito

 ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる弦楽トリオは、近年演奏機会が明らかに増している。その推進役として一役買っているのが、「石上真由子&中恵菜&佐藤晴真」による弦楽三重奏団だ。それぞれの楽器のソリストとして屈指の人気を誇る、3人の若きトップ奏者たちが、このすこし特殊な編成の魅力を広めるために集い、Hakuju Hallを舞台に高水準かつ感銘深い演奏で好評を重ねてきた。正式結成公演から3年目を迎えた今年は、邦人作曲家の知られざる重要作と、ベートーヴェンの名作に取り組む。

 邦人作品は、今年没後25年を迎える團伊玖磨が二十歳の年に書いた、古典的な構成と爽やかな旋律をもつ「弦楽三重奏曲」。そして、團伊玖磨の師で、来年没後50年を迎える諸井三郎が三十代後半で完成した、現代的で習熟した書法による「絃楽三重奏曲op.19」。20世紀前半の日本で生まれた弦楽トリオ曲を代表する2作品である。特に傑作と評価されながら聴くことが稀少な諸井作品を、これほどの名手たちで聴けるのは貴重な機会となる。

 一方、ベートーヴェンは、最も知られる弦楽トリオ曲の一つである「セレナーデ」。作品8という初期の意欲作で、全7楽章、この作曲家らしい創意工夫と楽しさにあふれている。このジャンルとしては例外的に演奏機会に恵まれてきた本作を、3人がどう聴かせてくれるのか、自ずと期待値は上がるというもの。国内外の弦楽三重奏曲の意欲作3曲で、弦楽トリオのさらなる可能性を体感する。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年5月号より)

石上真由子(ヴァイオリン) & 中 恵菜(ヴィオラ) & 佐藤晴真(チェロ)
2026.6/9(火)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 
https://hakujuhall.jp


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。