現代屈指のカウンターテナー、ヤクブ・ユゼフ・オルリンスキが来日!

 ヤクブ・ユゼフ・オルリンスキ。ポーランド出身、世界中のオペラハウスから引っ張りだこのカウンターテナーだ。その歌声は、フィギュアスケート・宇野昌磨選手のフリープログラムの楽曲に採用されたことでも話題を呼んだ。初の日本リサイタルがまもなく開催されるが、公演直前の4月7日、都内のポーランド大使館で記者会見が行われた。

 学生時代からの盟友であるピアニスト ミハウ・ビエルとともに颯爽と登場したオルリンスキ。まずは名刺がわりに、イギリス・バロック期を代表する作曲家、ヘンリー・パーセルの〈束の間の音楽〉〈もし音楽が恋の糧なら(第1稿)〉をステージ上で披露した。日本において、公式な場でのパフォーマンスはこの会見が初めて。第一声が響きわたるやいなや、客席は一瞬でその甘美な歌声に引き込まれ、2曲目が終わると大きな拍手が送られた。

ヤクブ・ユゼフ・オルリンスキ
左:ミハウ・ビエル

 古楽器集団 イル・ポモ・ドーロとの協働を一つの軸にキャリアを築き上げてきたオルリンスキ。今回のリサイタルでは、パーセルに加えヘンデルのオペラからの名曲が取り上げられる。二人は発売されたばかりのニューアルバム『イフ・ミュージック…』でもこうしたバロック時代の作品に精力的に取り組んでいるが、現代のピアノで伴奏している点がポイントだ。

「もちろん、すべてのバロック作品が私たちの編成にうまくはまるわけではありません。このデュオにふさわしい楽曲を常に探しています。時には、例えば声とオーケストラのために書かれた作品を編曲したりするわけですが、カウンターテナーという声種と現代のピアノで演奏することで、当時思い描かれていたものとはまた違う、新しく特別な響きが生まれてくることもあるのです。私たちが今『バロック音楽』や『クラシック音楽』と呼んでいるものも、当時の人たちからしてみればもちろん『現代の音楽』だったわけですよね。私たちはそれと同様に、こうした作品を“いまの音楽”として扱っていくことに喜びを見出しているのです」

 オルリンスキは、ブレイクダンスの国際大会で入賞を果たすほどの腕前のダンサーでもある。2024年のパリ・オリンピックでは、レディー・ガガやセリーヌ・ディオンら世界的アーティストが登場した開会式に出演、歌唱とともにブレイキンも披露した。

「現在は歌手としての活動が忙しく、ブレイキンの舞台に上がる機会は少し減っていますが、ダンスをやめることはありません。世界中をツアーで回る中で、その土地で出会ったダンサーと一緒にコラボするような機会も積極的に探しています。私にとって、ブレイクダンスと歌は必ずしも分けて考えるものではありません。オペラでも私の身体能力を加味した、フィジカルの面で難しい役柄に起用していただけることも多くあります。また、ダンスで培ってきた体の使い方の知識は、歌う上でも非常に役立っているのです。歌とブレイキン、この両輪での芸術活動をできる限り長く続けていきたいと思っています」

 「常にオールマイティーな、全方位的な芸術家でありたい。そして、会場にも新しい客層の方にぜひ足を運んでもらえたら」と語ったオルリンスキ。今回のリサイタルでは、前述のバロック作品に加えポーランド語の歌曲も取り上げるが、そのうちの一曲、シェイクスピアの訳詩に付曲されたバイルト「4つの愛のソネット」は、現代曲でありながらネオ・クラシックのコンセプトで作曲されたため非常に聴きやすいという。垣根を超え、常に新たな挑戦を模索するオルリンスキのステージは、楽曲そのものになじみがなくとも、これまでにない音楽体験をもたらしてくれることは間違いない。リサイタルは4月9日に兵庫県立芸術文化センター、10日に東京芸術劇場で開催される。世界を魅了する歌声を、ぜひご自身の耳で確かめてほしい。

月刊誌「ぶらあぼ」に掲載されたインタビュー記事はコチラ!

文・写真:編集部


ヤクブ・ユゼフ・オルリンスキ リサイタル

2026.4/9(木)19:00 兵庫県立芸術文化センター
問:芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255
https://www1.gcenter-hyogo.jp

2026.4/10(金)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:テンポプリモ03-3524-1221
https://tempoprimo.co.jp