【CD】Empfindungen〜C.P.E.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ集/寺神戸亮&ファビオ・ボニッツォーニ

 寺神戸亮とボニッツォーニによるC.P.E.バッハのソナタ演奏は、この作曲家のロマン的なポテンシャルをはっきりと示す。アルバム冒頭は「ファンタジア」嬰ヘ短調。チェンバロが主役で、響きを豊かにするためにヴァイオリンの助奏が付く、この時代特有のスタイルだが、ゆっくりとしたテンポで作品の幻想性を強烈に引き出す。ソナタではヴァイオリンが前面に出てくるが、今度は互いに従属し合わぬ新しい関係性を強調した演奏だ。ハ短調のソナタWq.78のアダージョ楽章で聴かせるヴァイオリンの響きが、まるで民族楽器の笛のようにノスタルジックなのも印象的。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年2月号より)

【information】
CD『Empfindungen〜C.P.E.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ集/寺神戸亮&ファビオ・ボニッツォーニ』

C.P.E.バッハ:鍵盤楽器とヴァイオリンのためのファンタジア 嬰ヘ短調、協奏的チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ 変ロ長調、チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ ハ短調、同ロ短調

寺神戸亮(ヴァイオリン)
ファビオ・ボニッツォーニ(チェンバロ)

Challenge Classics/東京エムプラス
XCC 72971 ¥3300(税込)


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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