福島康晴&エクス・ノーヴォによるモンテヴェルディ「倫理的・宗教的な森」全曲演奏会が完結!

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 「倫理的・宗教的な森」はモンテヴェルディの宗教曲の集大成。キリスト教の典礼音楽と非典礼的(倫理的)な音楽からなる曲集を「森」に喩える詩的な発想もすばらしいが、なんといっても人の声の魅力を楽器とともにこれほど美しく、壮麗に表現しえた音楽は他にないだろう。ただ、全37曲の大部なうえに作風や内容が極めて多彩なこともあって、日本では全曲はおろか抜粋でもなかなか聴く機会がない。

 福島康晴と古楽アンサンブル「エクス・ノーヴォ」は昨年6月からそんな初期バロックの名作の全曲演奏に取り組んでいる。しかも収録曲をただ並べるのではなく、「宗教的マドリガーレとミサ曲」「諸聖人の晩課」等のテーマを設定し、全曲を網羅するという興味深い内容で私たちを楽しませてくれてきた。そしていよいよこの11月に最終回を迎える。

 今回は「証聖者の晩課」(注:証聖者=殉教していない聖人や福者のこと)をテーマとし、典礼で歌われるアンティフォナ(交唱)や詩編とともに、〈主は言われた 第1番〉や〈マニフィカト 第1番〉など6曲が演奏される。アンティフォナは通常のグレゴリオ聖歌ではなく、ボローニャ等で活躍したカッツァーティの作で本邦初演。エクスの歌手は美声と完ぺきな様式感をそなえた実力者揃いだが、シリーズ最多の16名。器楽も4本のトロンボーンや通奏低音にはオルガンやハープの他、2本のテオルボが用意される。晩秋のTOPPANホールにモンテヴェルディの名作とともに17世紀イタリアの豪華絢爛たる「夕べの祈り」が響きわたる!

エクス・ノーヴォ vol.22 《倫理的・宗教的な森》全曲演奏シリーズ(全4回)最終回「証聖者の晩課」
2025.11/1(土)14:00 TOPPANホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186 
https://exnovo.jp

文:那須田 務

(ぶらあぼ2025年10月号より)