杉山知勢子は武蔵野音楽大学および同大学専攻科を修了後、様々な分野で活躍。近年は歌曲演奏に力を入れているメゾソプラノだ。第20回奏楽堂日本歌曲コンクールでは奥田良三賞を受賞するなど、その歌唱と表現は高く評価されている。本盤はそんな杉山の日本歌曲に対する深い愛情が結実した一枚である。山田耕筰に橋本國彦、團伊玖磨といった作曲家による名曲を集め、それぞれの世界観を丁寧に伝える。とりわけ山田の「AIYANの歌」では言葉の繊細な扱いと深い情念が結びつき、鮮烈な印象を残す。日本歌曲のスペシャリスト、塚田佳男のピアノがそれを支え、時にはさらに色濃いものへと導いていく。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年10月号より)
【information】
CD『わが歌、わが人生/杉山知勢子』
橋本國彦:牡丹、薄いなさけに、母の歌/磯部俶:松の花/山田耕筰:AIYANの歌/平井康三郎:三つの輓歌―亡き子に―/團伊玖磨:東京小景/高田三郎:ひとりの対話
杉山知勢子(メゾソプラノ)
塚田佳男(ピアノ)
コジマ録音
ALM-7318 ¥3300(税込)

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
X(旧Twitter) https://x.com/Shinno1102
Instagram https://www.instagram.com/shinno_pf/



