住友生命いずみホール シリーズ「バッハ2025 綾なす調和」~国内外のスペシャリストが大阪に集結!

 住友生命いずみホールが開館35周年を記念して、「バッハ2025 綾なす調和」と題したシリーズを実施、ホールの原点でもあるバッハの音楽に取り組むという。テーマは、「J.S.バッハの継承」。同ホールは初代音楽ディレクターを世界的なバッハ研究者・礒山雅(1946〜2018)が務めていたこともあって、彼の知見に基づく企画の数々は、音楽的に実り多きものだった。音楽学者がコンサートを企画・立案するという発想が音楽業界では新鮮で、常に注目を浴び続けた。この手法は現在も継承されており、2021年に音楽アドバイザーに就任した音楽学者・堀朋平が、礒山時代とは違う切り口で魅力的な企画を発信し続けている。

左より:堀 朋平 ©樋川智昭/鈴木優人 ©Marco Borggreve/ジャン=ギアン・ケラス ©Hiromichi Nozawa

 6月初旬、住友生命いずみホールで堀朋平と、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)首席指揮者の鈴木優人が本シリーズについて会見を行った。冒頭、「J.S.バッハの音楽は後世にどのような影響を与え、受け継がれたのか。様々な模様に織りなされてゆく『綾なす調和』の足跡を、国内外のトップ・アーティストと共に辿りたいと思い、そのままシリーズのタイトルとしました」と語った堀。この企画は、礒山が最後に企画・監修した「古楽最前線!躍動するバロック」(2018年〜2020年・このうち、2020年がバッハ関連企画だったがコロナでその多くが中止)以来のバッハに焦点をあてた企画で、この作曲家の音楽世界が5年ぶりに住友生命いずみホールに再現されるのだそうだ。

 鈴木優人は「私の公演(Vol.3)は、佐藤俊介さん(Vol.2)と平崎真弓さん(Vol.4)の考え抜かれた素敵な企画に挟まれ、光栄です。住友生命いずみホールはBCJが1990年に誕生するきっかけを与えてくれたホール。当時、礒山先生と私の父・鈴木雅明が熱く語り合ったように、時代を超えて今回、私も堀さんと色々と話し合いました。他では体験できない唯一無二のシリーズをお楽しみください」と話した。

左より:佐藤俊介 ©Marco Borggreve/平崎真弓 ©Harald Hoffmann/冨田一樹 ©樋川智昭

 本シリーズの公演はこだわりの詰まったものばかり。Vol.1「線と無限」は、現代最高のチェリストの一人、ジャン=ギアン・ケラスが「天国へと向かう旅」と表現する無伴奏チェロ組曲全6曲の演奏を披露する。Vol.2の「バッハのプリズム」では、ピリオド楽器の名手で、指揮者、コンサートマスターとしても活躍する佐藤俊介が、この日のために信頼を寄せる音楽家と「アンサンブル赤いはりねずみ」を結成し、バッハの足跡をめぐる特別プログラムを披露する。Vol.3の「深き淵より」では、鈴木とBCJが、カンタータ第38番「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」と、鈴木のオリジナル合唱曲「深き淵より」を並べて演奏することで、人間の悩みと祈りへの時代を超えた問いかけを行う。さらに、カンタータ第140番「目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声」やメンデルスゾーンのオルガン・ソナタ、ブラームスのモテットなど、多彩な作品を取り上げる。シリーズ全体は、この公演を中心としてシンメトリーに組み立てられている。

 Vol.4の「楽器は語る」では、古楽界を牽引し続けるドイツのベルリン古楽アカデミーが登場。ヴァイオリニストの平崎真弓をはじめ同アンサンブルが誇る名手たちがバッハの卓越した器楽書法を鮮やかに描き出す。Vol.5の「揺るがぬ信念」では、誰よりもこのホールのパイプオルガンを知り尽くす冨田一樹が、バッハの他、バッハの師匠や先輩の曲も交えながら、多彩なプログラムによる圧巻のオルガン演奏でシリーズを締め括る。

 5年ぶりに住友生命いずみホールに鳴り響く、捻りのきいたバッハの音楽世界。今年度下半期は、アドバイザー堀朋平が紡ぎ出す、バッハが織りなす「綾」に触れてみるのはいかがか。気付けば、貴方のバッハ観は一変しているに違いない。

文:磯島浩彰

(ぶらあぼ2025年9月号より)

住友生命いずみホール シリーズ「バッハ2025 綾なす調和」
【Vol.1】
9/25(木)、9/26(金)各日19:00 
【Vol.2】 10/24(金)19:00
【Vol.3】 12/6(土)16:00 
【Vol.4】 2026.3/7(土)14:00 
【Vol.5】 2026.3/21(土)16:00
大阪/住友生命いずみホール
問:住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188 
https://www.izumihall.jp
※各公演の発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。