『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2025年1月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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2025年4月20日のイースターを迎えて、早くも「復活祭」関連音楽祭の紹介時期となった。
まずは「ザルツブルク復活祭音楽祭」。今年のレジデント・オーケストラはフィンランド放送響で指揮者はエサ=ペッカ・サロネン。この組み合わせで取り上げるオペラがムソルグスキーの「ホヴァンシチナ」という、異色の選曲だ。だが、サロネン・ファンにとっては逆に興味津々の出し物かもしれない。もちろん、この意外なオペラの他に、マーラーの交響曲第2番「復活」やシベリウスの交響曲第2番などの十八番(おはこ)物も並べてファンを安心(?)させている。ちなみに、この音楽祭には、2026年から再びベルリン・フィルが戻ってくる(ご承知の通り、元々はカラヤンとベルリン・フィルによって始められた音楽祭)ため、ゲストオーケストラを呼ぶ形の音楽祭のあり方は2025年がとりあえず最後となる。
そのベルリン・フィルが2025年までの主戦場としている「バーデン=バーデン復活祭音楽祭」の目玉となるオペラは、キリル・ペトレンコ指揮のプッチーニ「蝶々夫人」。えっ、ペトレンコの「蝶々夫人」?!と眉をひそめられる方もいらっしゃるであろうが、ペトレンコは元々多くのオペラハウスで様々な作品を指揮してきたオペラ指揮者でもある。「蝶々夫人」もすでに英国ロイヤル・オペラで上演した実績もあり、決して無謀な選曲というわけではない。むしろ、超絶技巧を持つベルリン・フィルをギリギリ絞り込んだプッチーニがどう心に響いてくるのか、これまたサロネンの「ホヴァンシチナ」とは別の未知の魅力がある。なお、ペトレンコは他にベートーヴェンの「第九」を演奏するほか、客演指揮者としてはマケラとフルシャが起用されている。一時はベルリン・フィルからダメ出しを食らったというマケラがどう変身して帰ってくるのか?
ベルリンの「フェストターゲ2025」は、本来ならば新音楽監督となったティーレマンが全般を仕切るところだろうが、就任がかなり急だったため、スケジュール的に2025年の「フェストターゲ」には登場できなかったものと思われる。そのため、ウィリス=ソレンセン主演のベッリーニ「ノルマ」などを用意してはいるものの、ややインパクトに欠ける印象もある。では、ティーレマンはどうしているかというと、4月には、ウィーン国立歌劇場でR.シュトラウス「アラベラ」とワーグナー「ローエングリン」を振り、さらにはウィーン・フィルの定期にも登場するという、まさにウィーン三昧状態。ティーレマンは2025年秋にベルリン州立歌劇場でワーグナー「リング」を上演するとの噂もあり、次のシーズンからがベルリンでの本格始動となるようだ。フランスの「エクサン・プロヴァンス復活祭音楽祭」では、ヴァイオリンのルノー・カプソンが指揮にも登場。
音楽祭以外に注目のオペラは、アムステルダム国立オペラのR.シュトラウス「影のない女」。ケイティ・ミッチェルの演出が非常に魅力的。チューリヒ歌劇場のコルンゴルト「死の都」もヴィオッティの指揮、チェルニアコフの演出と興味をそそられる。ミラノ・スカラ座のF.フィリデイ「薔薇の名前」は、同名の大ヒット映画と同じく、ウンベルト・エーコの小説を題材とする注目作。フィレンツェのR.シュトラウス「サロメ」やグリゴリアン出演のパリ・バスティーユ・オペラのプッチーニ「三部作」、モネ劇場のモンテヴェルディ三部作を再構成した改変異色作なども要注目。
その他、時節柄、バッハの受難曲は演奏頻度が高いが、ピション指揮ピグマリオン(ウィーン、フランクフルト、ミラノ等)、ヘレヴェッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレ(ケルン)や、コープマンのケルン・ギュルツェニヒ管への客演(マルコ受難曲)などは手堅いところ。オーケストラでは、ラトルがチェコ・フィルに客演してのヴァイル「7つの大罪」、ソヒエフがバイエルン放送響を振るショーソンの交響曲など、お国ものでない選曲がとても面白い。
(曽雌裕一・そしひろかず)
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