東京国際指揮者コンクール 2024の本選が10月13日に東京オペラシティ コンサートホールにて行われ、ショスタコーヴィチの交響曲第10番(第3・4楽章)を振ったコルニリオス・ヴィクトル・ミハイリディス(ギリシャ)が優勝。日本から参加の吉﨑理乃が第3位に入賞、岡崎広樹も入選した。
〈東京国際指揮者コンクール 2024 結果〉(曲目は本選自由曲)
第1位 コルニリオス・ヴィクトル・ミハイリディス(ギリシャ)
♪ショスタコーヴィチ:交響曲第10番(第3・4楽章)
第2位 ライリー・ホールデン・コート=ウッド(英国)
♪メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」(第1・4楽章)
第3位 吉﨑理乃(日本)
♪R.シュトラウス:交響詩「死と変容」
入選(奨励賞) 岡崎広樹(日本)
♪チャイコフスキー:交響曲第4番(第1楽章)
特別賞・齋藤秀雄賞 吉﨑理乃(日本)
聴衆賞 ライリー・ホールデン・コート=ウッド(英国)
オーケストラ賞 コルニリオス・ヴィクトル・ミハイリディス(ギリシャ)
本コンクールは1967年にスタート、以後3年に一度実施。東京国際音楽コンクール〈指揮〉から改称して初の開催となった。世界37の国・地域より291名の応募があり、18名が書類・映像審査を通過。10月7日〜10日に行われた予選を勝ち抜いた4名が、課題曲(藤倉大「Glorious Clouds」)と自由曲を指揮する本選に臨んだ。管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団(第1次・第2次予選)と新日本フィルハーモニー交響楽団(本選)。前回に引き続き審査委員長を務めた尾高忠明のほか、広上淳一、ライナー・ホーネック、オッコ・カム、下野竜也、ユベール・スダーン、高関健らが審査にあたった。
本選の翌日、都内で入賞者発表記者会見が行われ、審査委員陣と上位入賞者3名が登壇した。
尾高によれば、近年のレベル向上で、映像審査時に18名に絞るのは大変な作業だったという。
「第1次予選では、モーツァルト《魔笛》のレチタティーヴォという大変難しい曲が含まれていました。きちんと振れるのは大体半分ぐらいかなと予想していたのですが、驚くことに全員が振れていた。『僕たちほんとに素晴らしい人たちを選んだね』と、他の審査委員の先生方と大喜びしました。
その後の第2次予選、本選へと進むたび、選ぶということがますます難しくなっていきました。今回はこのような順位となりましたが、過去のコンクール参加者を見ると、順位に関係なく活躍している方も大勢います。これはあくまでもスタート地点で、ここからどう将来を歩んでいくかが大切だと思います」
第1位を獲得したコルニリオス・ヴィクトル・ミハイリディスは、1989年生まれの35歳。シベリウス音楽院で指揮を学び、2016〜17年にはフィンランド放送響、18〜20年にはフランス放送フィルでアシスタントコンダクター、そして最近では、アイスランド響のコンダクター・イン・レジデンスも務めた。オペラの分野では2020年にテアトロ・レアル(マドリード)で《魔笛》を指揮している。オーケストラ賞も受賞し、審査委員からは「すでにキャリアも経験もあり、すぐに素晴らしい指揮者として世にでて活躍できる」と評価された。
会見でミハイリディスは「未だに信じられない気持ちでいます。このコンクールに参加する中で、自分の周りと競争しているのではなく、自分自身との闘いでどれだけ実力を出し切れるかということを競っているということに気づきました。日本を訪れるのは初めてでしたが、この国の素晴らしいオーケストラと演奏し、そして日本の文化を感じることができ嬉しく思います」と受賞の喜びを率直に語った。
第2位のライリー・ホールデン・コート=ウッドは、自由曲でメンデルスゾーンの「スコットランド」を演奏。現在BBCスコティッシュ交響楽団でアシスタントを務めている。会見で審査委員からは課題曲の藤倉作品の指揮が特に素晴らしかったと好評を得ていた。
R.シュトラウスの交響詩「死と変容」を振った第3位の吉﨑理乃は23歳という若さでの入賞。現在、紀尾井ホール室内管弦楽団で指揮研究員を務めている。吉﨑は特別賞・齋藤秀雄賞も併せて受賞し、溌剌とした素直な音楽が評されていた。
来年7月には、サントリーホールで入賞デビューコンサートが予定されており、入賞者たちはNHK交響楽団と共演する。
取材・文:編集部
入賞デビューコンサート
2025年7月10日(木) サントリーホール
管弦楽:NHK交響楽団
東京国際指揮者コンクール 2024
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