現代のピアノの詩人を、高原と木の温もりの中で聴く
大自然に囲まれた木のホールで、あのダン・タイ・ソンを聴く…。これはまさに夢のひとときだ。彼は、1980年ショパン・コンクールで東洋人初の優勝を果たして以来、真摯な活動を続ける、現代最高のピアニストの一人。「ピアノにハンマーがあることを忘れさせる」と賞された清冽なタッチ、的確で隙のないテクニック、そして何より虚飾なしに楽曲の真髄を伝える演奏は、世界中で絶大な信頼を得ており、近年日本でのパリ管との共演や、ベートーヴェンの協奏曲全曲演奏でも満場を沸かせた。
その彼が、標高1500mの地に建てられた、耳に心地よい柔らかく自然な響きを有する、最大250席の贅沢空間である八ヶ岳高原音楽堂へ、何と22年ぶりに出演する。演目は、この会場でこそ粒が輝くスカルラッティのソナタ集に、彼の代名詞ショパンのノクターン&ポロネーズ、さらに持ち前の美音が生きるもう一方の十八番フランスもののラヴェル、しかも硬軟揃えた有名曲集だから文句なし。ここはひとつ足をのばして、都会では味わえない至福の異空間に浸ろう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
11/29(土)17:00 八ヶ岳高原音楽堂
問:八ヶ岳高原ロッジ0267-98-2131
http://www.yatsugatake.co.jp