ロシア出身のピアニスト、エフゲニー・ザラフィアンツ。日本やドイツを中心に演奏活動を展開する彼の演奏はロシアン・ピアニズムが感じられる深くのびのある音色、そして作品の内容を深く掘り下げる洞察力の深さが持ち味。モーツァルトにベートーヴェン、そしてラフマニノフというプログラムは彼のピアニズムを発揮するのに最適の楽曲であろう。モーツァルトでは軽やかながらも精神性を感じさせ、ベートーヴェンでは構成力の高さを見せつける。そしてラフマニノフの「前奏曲集」と「音の絵」では、様々な表現を自在に行う技術の高さ、音色の多彩さを存分に示している。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年10月号より)
【information】
CD『悲愴の時/エフゲニー・ザラフィアンツ』
モーツァルト:幻想曲 ニ短調、ロンド ニ長調/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」/ラフマニノフ:前奏曲集op.23-4,6 op.32-10,12、音の絵op.33-6 op.39-5,7
エフゲニー・ザラフィアンツ(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-7267 ¥3080(税込)