
TOPPANホールには、長年にわたってこのホールを愛し、ホールと聴衆からも愛され、篤い信頼関係に結ばれたアンサンブルやソリストが、たくさんいる。
代表格が、フォーレ四重奏団である。2014年にこのホールで初めて演奏し、圧倒的な演奏の衝撃で聴衆を驚愕させ(筆者もそのときの興奮は、12年後の今もありありと思い出せる)、2年後からはホール主催公演に招かれるようになった。以来、数年おきに登場、変わることのない情熱と高い音楽性で、私たちを喜ばせ続けてくれている。昨年10月には、ホール25周年と結成30周年を記念して、5夜にわたる室内楽フェスティバルの主役となり、ゲストを交えて多彩な曲目を聴かせてくれたことも、記憶に新しい。
それから1年と2ヵ月、今年12月の登場では、原点に還って4人のメンバーで2夜の演奏を行う。レパートリーの中核をなすというブラームスの3曲のピアノ四重奏曲のなかから、8日の第1夜に第2番、9日の第2夜に第1番が後半に演奏される。
そして第1夜の前半には、ブラームスが高く評価したことで国際的な名声を得て、その後も親交を重ねたことで知られるドヴォルザークの作品から、30代半ばで書いたピアノ四重奏曲第1番と、スラヴ舞曲や歌曲など小品をピアノ四重奏用に編曲した4曲が演奏される。フォーレ四重奏団は歌曲や「展覧会の絵」のような作品の編曲版の演奏も絶品だけに、これら4曲も楽しみだ。後半のブラームスの第2番は、2016年にも聴かせてくれた作品で、それから10年をへて、さらなる深化を遂げた演奏が期待できる。
続いて第2夜の前半は、シューベルトの「アダージョとロンド・コンチェルタンテ」と、シューマンのピアノ四重奏曲。シューマンは2014年のアンコールで取りあげた緩徐楽章のメランコリーが哀しく美しく、それからも折に触れて、この楽章や全曲を日本でも演奏してくれた。今回も緩急のコントラストが見事なことだろう。そして後半のブラームスの第1番は、フォーレ四重奏団の代名詞というべき、十八番のなかの十八番。2014年の凄まじい爆発と加速は忘れがたいし、それから何度聴いても、鮮度と生命力の高さ、白刃を交えるようなギリギリの真剣勝負の連続は、まったく変わらない。
4人が明確に存在を主張し、同時に音響体としての一体感も完璧という、個人と全体の理想的な協働関係。今年も鶴首して待つ。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2026年10月号より)
フォーレ四重奏団 第1夜・第2夜
【第1夜】2026.12/8(火) 【第2夜】12/9(水)
各日19:00 TOPPANホール(完売)
問 TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com

山崎浩太郎 Kotaro Yamazaki
1963年東京生まれ。演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(以上アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。
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