田部京子、ロマン派の深き森へ ――12月に浜離宮朝日ホールでリサイタル

©Akira Muto

 澄んだ美音と内省的なアプローチで、作品の真髄を静かに照らし出してきたピアニスト、田部京子。バイエルン放送響やモスクワ・フィル、読響や新日本フィルなど内外のオーケストラと共演を重ね、室内楽でもカルミナ四重奏団をはじめとする世界的な名手たちから信頼を寄せられてきた。こうした多彩な共演を通じて磨かれた表現力は、ソロ・リサイタルでの音楽性をも一段と深めている。浜離宮朝日ホールでは、6年にわたる「シューベルト・プラス」シリーズの成功に続き、2024年から新シリーズ「−SHINKA−〈進化×深化×新化〉」を展開。回を重ねるごとに音楽的探求を深め、確かな支持を集めている。

 第6回となる今回は、ショパン、ブラームス、ラフマニノフという3人の円熟期の作品に迫る濃密なプログラムを編む。前半のショパンは、和声の色合いが豊かな前奏曲 op.45、儚さと情熱が交錯する「2つのノクターン」op.48、そして晩年の孤高と憧憬とを湛えた傑作「舟歌」を取り上げる。ブラームス後期のピアノ小品集からは「4つの小品」op.119を選んだ。陰影に富むこの作品を、田部の洗練されたタッチがどのように描き出すのか注目したい。後半には、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番(1931年版)を配し、深い諦念から精神の解放へと至る圧倒的なエネルギーを解き放つ。浜離宮朝日ホールの繊細な音響とともに田部が紡ぐ「SHINKA」した音世界に、じっくりと浸りたい。

文:飯田有抄

(ぶらあぼ2026年10月号より)

田部京子 ピアノ・リサイタル −SHINKA−〈進化×深化×新化〉Vol.6
2026.12/6(日)14:00 浜離宮朝日ホール
問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/


飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)

音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。