【CD】日本のしらべ/小泉弥生

 欧州中心に長年活躍してきたメゾソプラノの小泉弥生が、喜寿を記念するアルバムをリリースした。日本歌曲を中心に、しみじみとした情緒をしっとりと歌いあげている。山田耕筰「AIYANの歌」は、北原白秋の詩の柳河方言が独特の余韻を醸し出す。遊女のもの思いや子守女のいじらしさを、小泉の歌がさらっと掬い上げる。〈曼珠沙華〉では、血のようなひがんばなを7歳のお嬢様が折りしだく。怖ろしい情景。「六つの俳句」は、バスのウルセンとの二重唱で、芭蕉らの俳句を日本語とノルウェー語で歌う。クヴァルンドックの曲は、時に不思議、時に不気味な響きで二言語が交じり合う。味わい深い歌曲集。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年7月号より)

【information】
CD『日本のしらべ/小泉弥生』

三善晃:四つの秋の歌/山田耕筰:AIYANの歌/福島雄次郎:民謡「わがふるさとの歌」より〈子守女の唄〉〈おざや節〉/橋本国彦:舞/ギスレ・クヴァルンドック:6 Haiku sanger 六つの俳句 他

小泉弥生(メゾソプラノ)
左近允亜紀子(ピアノ)
フルーデ・ウルセン(バス)

収録:2006年4月、トッパンホール(ライブ) 他
ナミ・レコード
WWCC-8012 ¥3080(税込)