ピアニストたちに新たなレパートリーを開拓したカプースチン。残念ながら今年他界してしまったが、数多くの素晴らしい作品を残してくれた。それらの全曲録音を行っているのが、カプースチン作品のスペシャリストである川上昌裕である。精密にコントロールされた指さばきと、濃淡のコントラストが見事なタッチの演奏は、カプースチン作品の色彩を鮮やかに魅せてくれる。注目は「ピアノ・ソナタ第8番」。単一楽章のソナタで、華麗なテクニックと複雑なリズムに彩られつつ、動機が巧妙に変化していく様が楽しめ、カプースチンの知られざる一面を発見できることであろう。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『〈カプースチン ピアノ作品全曲録音Ⅳ〉ピアノ・ソナタ第8番、第9番/川上昌裕』
カプースチン:ピアノ・ソナタ第8番・第9番、ピアノのための組曲、アンダンテ、異なる音程による5つのエチュード
川上昌裕(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCT-00176 ¥3000+税