ヤナーチェクの「弦楽組曲」の前後にモーツァルト晩年のピアノ協奏曲と交響曲を配したプログラムは、「スラブもの」と古典を得意とする同楽団らしい。指揮者を置かず、コンサートマスターの安永徹が室内オーケストラをまとめる演奏スタイルであるが、とりわけ共演歴の長い市野あゆみとのモーツァルト最後のピアノ協奏曲は秀逸な演奏。端正で、一切の虚飾も気負いも感じられない市野のピアノは、オーケストラと独奏の対話を特徴とする同作品の魅力を最大限に引き出している。中でも第2楽章のピアノによる主題は、透徹したピアニズムと相まって、心に沁み入るほど感動的である。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年1月号より)
【information】
CD『オーケストラ・アンサンブル金沢 22年11月定期ライヴ録音全曲』
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番、交響曲第40番/ヤナーチェク:弦楽組曲 JW Ⅵ/2 他
安永徹(コンサートマスター/ヴァイオリン)
市野あゆみ(ピアノ)
オーケストラ・アンサンブル金沢
収録:2022年11月、石川県立音楽堂(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-7992-3(2枚組) ¥3300(税込)