ウィーン・フィル恒例のシェーンブルン宮殿での野外コンサート。今年はネゼ=セガンがフランス音楽を取り上げた。キビキビとしたテンポで進む「カルメン」組曲のなかで、第3幕への間奏曲などしっとりと声部を絡ませ合うのがウィーンらしい。ブーランジェの「春の朝に」がいいアクセント。持ち前の色彩性とウェットな情感を宿す。ガランチャを迎えたグノーやサン=サーンスのアリアでも深々とした余情を漂わせる。そして、柔らかに、かつ明瞭に色彩が重ねられる「ダフニスとクロエ」第2組曲に、小気味良く、ときに蠱惑的な「ボレロ」。クライマックスはやはりラヴェルだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年9月号より)
【information】
CD『ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2023/ヤニック・ネゼ=セガン&ウィーン・フィル』
ビゼー:「カルメン」第1組曲より〈間奏曲〉/ブーランジェ:春の朝に/グノー:歌劇《サフォー》より〈おお、わが不死の竪琴よ〉/ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲、ボレロ/サン=サーンス:歌劇《サムソンとデリラ》より〈あなたの声に私の心は開く〉 他
ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)
収録:2023年6月、ウィーン(ライブ)
ソニーミュージック
SICC-2270 ¥2860(税込)