『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2023年1月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
↓それぞれの国の情報はこちらから↓
恒例の「ザルツブルク復活祭音楽祭」は2022年限りでティーレマンとの契約が終了し、2023年からは1年ごとに毎年違った指揮者とオーケストラで運営されていくことになった。そして2023年を担当するのは、アンドリス・ネルソンスとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管。目玉となるオペラ公演のワーグナー「タンホイザー」は、実は2017年にキリル・ペトレンコがバイエルン州立歌劇場で上演し、その後日本公演にも持ってきた、あのカステルッチのプロダクション。カウフマン、ゲルハーヘル、ペーターゼン、ガランチャと歌手も実に豪華だが、ミュンヘンのプロダクションがなぜここに?という微妙な思いもなくはない。ブルックナー、ブラームス、シューマンと手堅いプロを組んだネルソンス指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるオーケストラ・コンサートと合わせ、今後しばらくの間、この音楽祭のテイストは「超豪華客演音楽祭」という趣を呈するのかもしれない。
一方、今名前の出たペトレンコは、ベルリン・フィルを引き連れて「バーデン=バーデン復活祭音楽祭」に登場、R.シュトラウスのオペラ「影のない女」に挑む。こちらは紛れもなく今回が初のプロダクション。バイエルン時代の名演奏を思い出すと、今回ベルリン・フィルをバックにどのような音楽をペトレンコが作り出すのかワクワクする。その他、オーケストラ・コンサートの方には、ハーディングとアイムが客演指揮者として招かれている。
もう一つ、「エクサン・プロヴァンス復活祭音楽祭」も近年活況を呈している。2023年も、ケルン歌劇場の客演で、ロト指揮のワーグナー「さまよえるオランダ人」、ヤーコプスやルセ指揮のバッハ、ルイージ指揮のRAI国立響、アルゲリッチのピアノ・デュオやマケラ指揮のパリ管、ラベック姉妹とハンニガンの共演等々、多彩な内容となっている。
なお、ベルリン州立歌劇場の「フェストターゲ」は、今のところバレンボイムの名がオペラ(ワーグナーの「リング」)にもコンサートにもクレジットされてはいるが、彼の病気の具合がはっきりしないので、大幅な代役公演になる可能性も少なくない。おや、それではまたティーレマンが代役で「リング」を振るの!!と思いきや、彼は「地元」のドレスデン・ゼンパーオーパーで、実質的なミニ音楽祭とも言える「リヒャルト・シュトラウス・ターゲ」をぶち上げ、「ばらの騎士」、「アラベラ」の他、オーケストラ・コンサートで「ダフネ」、「ダナエの愛」、「カプリッチョ」からの抜粋場面を演奏するなど、相変わらず意気軒昂だ。一方、「シュヴェツィンゲン音楽祭」ではイザベル・ムンドリーの新作オペラが興味をそそる。ちなみに、ルツェルンでも「春の音楽祭」と称するごく短期間の音楽祭企画があるのだが、本文に掲載できなかったので、HPでご確認のほど(https://www.lucernefestival.ch/de/)。
音楽祭以外の注目としては、オペラでは、ウィーン国立歌劇場のモンテヴェルディ「ウリッセの帰還」、ケルン歌劇場のワーグナー「さまよえるオランダ人」(ロト指揮)、フランクフルト歌劇場のヘンデル「ヘルクレス」、チューリヒ歌劇場のグノー「ロメオとジュリエット」、ミラノ・スカラ座のドニゼッティ「ランメルモールのルチア」(シャイー指揮)、パリ・オペラ座・ガルニエ宮のヘンデル「アリオダンテ」、オランダ国立オペラのR.シュトラウス「ばらの騎士」、英国ロイヤル・オペラのサーリアホ「イノセンス」他多数。ジョン・アダムズの「中国のニクソン」がスペインのテアトロ・レアルとパリ・オペラ座で競合するのが興味深い。もう一点。4月はとにかくワーグナーの上演数がとても多いので本文でご確認いただきたい。
オーケストラにはほとんど言及できなくなったが、一番の注目はマケラのベルリン・フィル・デビューだろうか。彼は他にもパリ管、コンセルトヘボウ管、ロンドン・フィル等に登場。もはや世界中で引っ張りだこ状態だ。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)