『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2022年9月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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まずオペラの注目公演から。ベルリン州立歌劇場で11月から「バロックターゲ2022」として上演されている演目(ヤーコプス指揮のヴィヴァルディ「イル・ジュスティーノ」、スピノジ指揮のモンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」等)はどれも注目公演だが、中でも12月4日から始まるモーツァルト「ポントの王ミトリダーテ」は、指揮のミンコフスキが、演出のSPAC(静岡県舞台芸術センター)芸術総監督の宮城聰氏とコンビを組んで2020年11月に堂々のお披露目公演となるはずだったところ、コロナの感染拡大により直前に公演中止に至ったという我々日本人にとっても無念の公演。今度こそぜひ無事の開催にこぎつけてほしい。
次にはワーグナーの2公演。ウィーン国立歌劇場の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」とバイエルン州立歌劇場の「ローエングリン」。前者ではキース・ウォーナーの演出、ハンス・ザックスを歌ってきたヴォルフガンク・コッホのベックメッサーの役作り、なども興味津々だが、ワルターに英国出身のテノール、デイヴィッド・バット・フィリップを起用したところが興味深い。なお、日本ではあまり話題にならないが、英国の歌手には最近注目株が多く、例えば12月末にマケラ指揮ウィーン響の「第九」でソプラノを担当するルイーズ・オールダーなどは、今後必ずオペラ界の第一線を賑わすであろう逸材。
一方、後者ではワーグナーの新演出を音楽監督のユロフスキーではなく、フランソワ=グザヴィエ・ロトが振るというのがちょっとした驚き。しかも、こちらはフォークト、ペーターゼン、カンペと何だかペトレンコ時代のプレミエを思わせるこの劇場常連のスター歌手を集めた万全の布陣。今後、ロトが定期的にこの劇場に登場してくれるのなら楽しみが増す。ちなみにワーグナーの注目公演としては、フランクフルト歌劇場で11月から続く「マイスタージンガー」に日本人指揮者の森内剛が出るのも重要。
さらにミラノ・スカラ座のシーズン・オープニングがロシアもののムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」(ホルテン演出)というのもご時勢的にちょっとビックリ。その他、12月のオペラではウィーン国立歌劇場のR.シュトラウス「ばらの騎士」、フランクフルト歌劇場のチャイコフスキー「チャロデイカ」、チューリヒ歌劇場のカヴァッリ「エリオガバロ」(ヘリオガバルス)、ジュネーヴ大劇場のドニゼッティ「マリア・ストゥアルダ」、オランダ国立オペラのプッチーニ「トゥーランドット」、テアトル・レアルのベッリーニ「夢遊病の女」(新国立劇場との共同制作)あたりも面白そうなラインナップ。
オーケストラでは、同じ指揮者がヨーロッパ内の複数のオーケストラを振るケースがやや目立つ。例えば、トゥガン・ソヒエフ指揮のベルリン・フィルとシュターツカペレ・ドレスデン、ケント・ナガノ指揮のウィーン響、ハンブルク・フィルとミュンヘン・フィル、ネルソンス指揮のベルリン・フィル、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とバンベルク響、マケラ指揮のウィーン響、パリ管とコンセルトヘボウ管など。しかも、オーケストラごとに演奏曲目がまったくダブらないというのも意外に珍しい。中でも、ナガノ=ウィーン響でのコパチンスカヤ独奏のバルトークのヴァイオリン協奏曲、ネルソンス=ベルリン・フィルでの内田光子との共演、同バンベルク響とのマーラーの交響曲第7番、マケラ=ウィーン響のベートーヴェン「第九」、同パリ管とのマーラー「復活」あたりは注目度大。相変わらず多彩なプログラムを組むラトル=ロンドン響(ヨーロッパ・ツアーあり)、大野和士指揮のブリュッセル・フィルも見落とせない。また、ジルヴェスター・コンサートや年越しコンサートとしては、やはり、ペトレンコ=ベルリン・フィル、ティーレマン=シュターツカペレ・ドレスデン、バレンボイム=シュターツカペレ・ベルリンあたりが三強となろうか。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)