稲沢朋華、森本隼太、黒木雪音が競演! 三者三様に描くベートーヴェンのピアノ・ソナタ

左より:稲沢朋華 ©福岡諒祠/森本隼太/黒木雪音

 「ごほうびクラシック」は、一流アーティストの演奏を、手頃な価格とリラックスした雰囲気で楽しめる人気シリーズ。節目となる第20回は、国内外のコンクールで目覚ましい成績を残し注目を集める稲沢朋華、森本隼太、黒木雪音の3名による「ピアノ・オールスターズV」だ。

 3名はいずれも、日本が世界に誇るピアニストを輩出してきたピティナ・ピアノコンペティション特級で優勝もしくは上位入賞を果たした経歴を持つ。

 稲沢は2025年の同コンペティションでグランプリと聴衆賞を獲得し、桐朋学園大学を首席で卒業。現在は同大学院に在籍しながら演奏活動を展開し、表現力の高さと真摯な音楽づくりが評価されている。森本は16歳でイタリアへ渡り、現在もヨーロッパを拠点に学びと演奏活動を両立している。17歳の時にはヘイスティングス国際ピアノ協奏曲コンクールで満場一致の優勝を果たし、スケールの大きな演奏を持ち味としている。黒木はダブリン国際ピアノコンクールで日本人初の優勝、リスト・ユトレヒト第1位など国際的にも高い評価を受けており、拠点を日本に置きつつ世界各国から招聘を受け、精緻な技術と歌心にあふれた演奏で多くの聴衆を魅了している。

 今回の公演は「オールスターズ」の名にふさわしく、それぞれの演奏はもちろん、ピアノの多彩な魅力にも出会えるだろう。第1部は各演奏者の新たな挑戦や得意とする楽曲が並ぶ。稲沢と黒木はジャズの要素を多分に含むニコライ・カプースチンの「8つの演奏会用エチュード」から楽曲を分け合う。稲沢にとっては人前でこの作品を弾くのは初めてであり、黒木は10年以上取り組んできたという。初挑戦ならではの輝きと、長年向き合ってきたからこその“味”の対比が楽しみである。森本はラヴェルの「鏡」から〈道化師の朝の歌〉。留学で得た新たな奏法を駆使して挑むラヴェルに期待したい。

 第2部では、3名によるベートーヴェンのピアノ・ソナタへの“挑戦”を見届けることができる。稲沢は「新しい道」へと踏み出した作曲者の様々な工夫がちりばめられた第17番「テンペスト」を選択。黒木はソナタの枠を超えた幻想的な雰囲気をもつ第14番「月光」、そして森本は劇的かつ高度なピアニズムが求められる第23番「熱情」に向き合う。

 シリーズ恒例、開演前のヨガ講師による「座ったままストレッチ」も実施。クラシック初心者や親子連れも安心して楽しめる。若きピアニスト3名が名曲を通してそれぞれの“いま”と挑戦を示す本公演は、年末を輝かせる“ごほうび”となるだろう。

文:長井進之介

(ぶらあぼ2026年10月号より)

ごほうびクラシック 第20回 ピアノ・オールスターズV
2026.12/13(日)14:00 第一生命ホール
問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net


長井進之介 Shinnosuke Nagai

国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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