『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年12月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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先月号で部分的にご紹介した、独OPERNWELT誌の年間最優秀賞(2022/23シーズン)の補足から。主な受賞が、歌劇場:フランクフルト歌劇場、女声歌手:アスミク・グリゴリアン、演出家:リディア・シュタイアーであることはお知らせした通り。その他の主な受賞は、男声歌手:ジョン・オズボーン、指揮者:パブロ・エラス=カサド、オーケストラ:バイエルン州立管、作品:シェーンベルク「モーゼとアロン」(ボン歌劇場)、チャイコフスキー「スペードの女王」(リヨン歌劇場)、ヴァインベルク「パサジェルカ(旅の女)」(バイエルン州立歌劇場)、ワーグナー「タンホイザー」(フランクフルト歌劇場)、マルティヌー「ギリシャ受難劇」(ザルツブルク音楽祭)、などとなっている。なんで受賞作品がこんなに多いのかというと、今年の審査員43名(ドイツ語圏を中心とした音楽評論家・ジャーナリスト等)の票が結構バラバラで、何と3票取れば同率1位になってしまうからだ。最優秀劇場のフランクフルト歌劇場にしても、結果としてわずかに計7票取ったに過ぎない。これで「最優秀」と呼ぶのはどうなのか…と毎年首をかしげるところだが、まあそんな賞と思っていただきたい。
ところで、その「フランクフルト歌劇場」は3年連続の受賞となったが、受賞理由は「勇気ある演目選択・特筆すべき演出・高い演奏水準などとなっている。それを踏まえて3月の公演内容を見てみると、確かに凄まじい内容だ。上演されるのは、マニャール「ゲルクール」、アダン「ロンジュモーの馭者」、ヤナーチェク「死者の家から」、ディッタースドルフ「医師と薬剤師」、チャイコフスキー「チャロデイカ(魔女)」、ライマン「インビシブル-目に見えぬもの」の6作品。こんな希少オペラばかりでよく採算がとれるものと呆れるが、この攻撃的な姿勢こそ同劇場の生命線でもあるのだろう。
希少オペラといえば、3月はウィーン国立歌劇場で上演されるチャイコフスキー「イオランタ」も、ソヒエフが指揮を担当するだけに大注目。同じロシアものでは、アン・デア・ウィーン劇場のプロコフィエフ「修道院での婚約」(ミキエレット演出)、ジュネーヴ大劇場のムソルグスキー「ホヴァンシチナ」(ビエイト演出)も注目。ヤナーチェクでは、ベルリン州立歌劇場の「ブロウチェク氏の旅」(ラトル指揮)、バイエルン州立歌劇場の「カーチャ・カバノヴァ」(グラジニーテ=ティーラ指揮)が注目プレミエ。現代ものでは、ベルリン・コーミッシェ・オーパーのグラス「アクナーテン」、ドレスデンのサーリアホ「イノセンス」、チューリヒ歌劇場のフラー「大火災」、パリ・オペラ座のデュサパン「旅、ダンテ」(ナガノ指揮)、オランダ国立オペラのヴェナブルス作品、メトロポリタン歌劇場のヘギー「モビー=ディック」など多士済々。古楽系では、チューリヒ歌劇場のヘンデル「アグリッピーナ」、ミラノ・スカラ座のガスマン「オペラ・セリア」、ローマ歌劇場のヘンデル「アルチーナ」、フェニーチェ歌劇場のスカルラッティ「名誉の勝利」、オペラ・コミークのラモー「サムソン」など。
冒頭の独OPERNWELT誌で最優秀女声歌手を受賞したアスミク・グリゴリアンは、アン・デア・ウィーン劇場のベッリーニ「ノルマ」(ノルマ役)とバイエルン州立歌劇場のワーグナー「さまよえるオランダ人」(ゼンタ役)に登場する。後者は二期会の「影のない女」の演出で猛烈な賛否の議論を巻き起こしたコンヴィチュニーの長年続く演出。ついでながら、本文に掲載はできなかったがコンヴィチュニーはリンツ州立歌劇場で3月29日からヤナーチェク「利口な女狐の物語」の新演出を出す。他には、ウィーン・フォルクスオーパーのカールマン「チャールダーシュの女王」は絶対面白いだろうし、ネトピル指揮のケルン歌劇場のモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」、エッセン歌劇場のワーグナー「パルジファル」なども要注目。
オーケストラ関係では、ティーレマン指揮のシュターツカペレ・ベルリン、話題のHIMARIがいよいよ登場するメータ指揮のベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管の企画公演「アムステルダム750年」などが大変興味をそそる。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)