辻井伸行が幾度も共演を重ねてきたヴァシリー・ペトレンコと、得意のラフマニノフ協奏曲第2番のスタジオ録音に臨んだ。ここで辻井は、すべての音をクリアに際立たせることで、一歩引いて曲自体に語らせるような練達の演奏を展開。オーケストラ共々、あふれる熱気と冷静な意志が同居する懐深さをみせる。驚かされたのはカプースチンのエチュードの2018年ライブ録音。実演とは思えないほどの超絶テクニックで完璧に再現、熱いグルーヴ感を出しながらも安定した流れで軽やかに聴かせていて圧巻。拍手がカットされているのは残念だが、会場はさぞや歓声に包まれたことだろう。
文:林昌英
(ぶらあぼ2023年1月号より)
【information】
CD『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、カプースチン:8つの演奏会用エチュード/辻井伸行&ペトレンコ&ロイヤル・リヴァプール・フィル』
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
カプースチン:8つの演奏会用エチュード
辻井伸行(ピアノ)
ヴァシリー・ペトレンコ(指揮)
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
収録:2018年2月、サントリーホール(ライブ) 他
エイベックス クラシックス
AVCL-84140 ¥3300(税込)