【SACD】ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」、ジャズ組曲第1番/井上道義&九響

ショスタコーヴィチの12番はかつて毀誉褒貶があったが、現在はある種の人気作として定着。その再評価に貢献したのは井上道義。2023年の九響との録音は、引退前の多くの演奏と同じく、どこか温もりのある演奏。立派な音響は築かれるのだが、人を寄せ付けない強靭さではなく、豊かな広がりがある。異様な音楽でもなければ、過剰に深読みする必要もない。スターリンの象徴とされる3音動機が連続するラストもほとんどテンポを落とさず、畏怖も皮肉もこえた未踏の領域を示す。「ジャズ組曲」でのセンスとペーソスは井上の独壇場で、ハワイアン・ギターが妖艶に響く。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年11月号より)

【information】
SACD『ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」、ジャズ組曲第1番/井上道義&九響』

ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」、ジャズ組曲第1番

井上道義(指揮)
九州交響楽団

収録:2023年3月、アクロス福岡シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00553 ¥3850(税込)


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。