小林研一郎&日本フィル、11月の東京定期は十八番「我が祖国」で魂の一本勝負!

小林研一郎 ©山本倫子

 小林研一郎が日本フィルとスメタナの連作交響詩「我が祖国」全曲に6年ぶりに挑む。この曲は有名な〈モルダウ〉(第2曲)だけでなく、古城ヴィシェフラドから始まりボヘミアの自然や伝説、フス戦争の記憶へと分け入りながら、一つの大きな民族の物語を形づくってゆく全6曲の連作だ。ハプスブルク帝国の支配下で作曲され、独立後も占領や解放、民主化といった歴史の節目で演奏されてきた。民族の歴史と記憶、祖国への思いなどが込められた、いわばチェコの文化遺産なのだ。

 86歳を迎えた現在も第一線で活躍する小林にとって、この作品は長いキャリアのなかでも中核的な位置を占めている。1974年、第1回ブダペスト国際指揮者コンクールで優勝して以来、小林は東欧のオーケストラと深く結びつき、2002年にはチェコ・フィルと「我が祖国」を演奏し「プラハの春」国際音楽祭のオープニングを飾っている。スメタナの命日に毎年この作品で幕を開ける音楽祭のオープニングを任されたのは、いわば本場のお墨付きを得たということだ。

 チェコ人以外でこれほど長期間「我が祖国」を自らの十八番として演奏し、複数のオーケストラと録音まで残してきた指揮者は珍しい。大地を踏みしめるような足取り、旋律をたっぷりと歌わせる息の長さ、そしてクライマックスで一気に放出される熱量。こうした小林の持ち味はとりわけ本作によく合う。長年にわたり共演を重ねてきた日本フィルならば、阿吽の呼吸も期待できる。「我が祖国」とともに歩んできたコバケンのキャリアを重ね合わせながら聴きたい一夜である。

文:江藤光紀

(ぶらあぼ2026年11月号より)

小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 第785回 東京定期演奏会
2026.11/13(金)19:00、11/14(土)14:00 サントリーホール
問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp