【CD】グレツキ:交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」/クシシュトフ・ウルバンスキ&ワルシャワ・フィル

 先鋭的な作曲家だったグレツキが、後半生になって調性をもつシンプルで宗教的な音楽を書き始める。その代表作がこの交響曲第3番で、1990年代には「悲歌のシンフォニー」というタイトルで一大ブームを巻き起こした。このウルバンスキ盤は、同曲の久々の全曲録音だ。淀みないテンポで、すこぶる見通しがいい。通常は全3楽章を1人の歌手が受け持つが、各楽章の性格に合う3人の歌手を起用。第1楽章は、管弦楽から分離するように聴こえてくるカウンターテナー。柔らかな祈りに満ちた第2楽章。そして叙事的な第3楽章。これらの描き分けにより、作品の彫りの深さが格段に際立つ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年12月号より)

【information】
CD『グレツキ:交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」/クシシュトフ・ウルバンスキ&ワルシャワ・フィル』

グレツキ:交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」

クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮)
ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団
ミハウ・スワヴェツキ(カウンターテナー)
エディタ・クシェミェン アンナ・フェデロヴィッチ(以上ソプラノ)

CD ACCORD/ナクソス・ジャパン
ACD-351 オープン価格


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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