2026年3月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2025年12月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 先月号で一部ご紹介した、独OPERNWELT誌の年間最優秀賞(2023/24シーズン)の補足から。この賞で注意を要するのは、決定方法が単純多数であるということ。つまり、最優秀歌劇場がチューリヒ歌劇場であることは先月号でご紹介した通りだが、得票数は、今年の審査員39名(ドイツ語圏を中心とした音楽評論家・ジャーナリスト等)のうち、驚くなかれ、わずかに6票取ったに過ぎなかっただけなのだ。しかし、その他は5票以下に分散したため「最優秀」という結果に。最優秀演出家のトビアス・クラッツァーに至っては得票数は5票。先月号で紹介できなかった最優秀上演作品は、2024年夏にザルツブルク音楽祭で上演されたヴァインベルクの「白痴」(ワルリコフスキ演出)だが、得票数は、最優秀再発見作品枠を含めても6票…。この賞はそのようなものだと知っていただいた後、「復活祭音楽祭」関係に移ろう。

 2026年は、いわゆる復活祭(イースター)が4月5日にあたるため、各地の「復活祭音楽祭」はそれに先立つ3月27日または28日に開始される例が多い。その中でも、一番の話題性で言えば、2013年以来、復活祭音楽祭の公演地をバーデン=バーデンに移していたベルリン・フィルが14年振りにザルツブルクに戻ってくるということ。しかも、5年計画でペトレンコがワーグナーの「リング」を1作ずつ取り上げる(2028年は1年休んでシェーンベルクの「モーゼとアロン」を上演予定)というので、人気は上々だ(ちなみに「ラインの黄金」は即日完売)。

 ザルツブルク以外の「復活祭音楽祭」関係(3月分)では、フェストターゲ(ベルリン州立歌劇場)のR.シュトラウス「ばらの騎士」(ティーレマン指揮)、ヴェルディ「仮面舞踏会」(ネトレプコ出演)、バーデン=バーデン復活祭音楽祭のマルヴィッツ指揮ワーグナー「ローエングリン」、エクサン・プロヴァンス復活祭音楽祭の藤田真央のピアノ・リサイタルなどが目玉公演。また、チューリヒ歌劇場で行われる「チューリヒ・バロック」なる一連の公演は全て要注目。バルトリ出演のヘンデル「エジプトのジュリオ・チェーザレ」、ジャルスキー指揮の同「アチ、ガラテアとポリフェーモ」、ピション指揮のバッハ「マタイ受難曲」、アイム指揮のルクレール「シラとグロキュス」など強力な演目が並ぶ。古楽系では、ジュネーヴ大劇場のラモー「カストールとポリュックス」(アラルコン指揮)、フェニーチェ歌劇場(テアトロ・マリブラン)のヴィヴァルディ「オットーネ・イン・ヴィラ」に加え、ベルリン・コーミッシェ・オーパーのヘンデル「ベルシャザール」(ペトルー指揮)、ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルによる同「オルランド」(パリのシャンゼリゼ劇場、バルセロナのリセウ大劇場、他)も見逃せない。

 通常公演では、ワーグナー関係が、ベルリン・ドイツ・オペラ(ペルトコスキ指揮)、ドレスデン・ゼンパーオーパー(ガッティ指揮)の「パルジファル」、ハンブルク州立歌劇場の「ローエングリン」(コンヴィチュニー演出)、ケルン歌劇場(M.アルブレヒト指揮)の「ワルキューレ」、フランクフルト歌劇場(グックアイス指揮)、メトロポリタン歌劇場(ネゼ=セガン指揮)の「トリスタンとイゾルデ」、ミラノ・スカラ座の「リング」公演、英国ロイヤル・オペラの「ジークフリート」(コスキー演出)など華々しく並ぶ。モーツァルト関係でもウィーン国立歌劇場の「皇帝ティートの慈悲」(エラス=カサド指揮)、アン・デア・ウィーン劇場やシャンゼリゼ劇場での「アルバのアスカニオ」(ルセ指揮)、ケルン歌劇場の「フィガロの結婚」など注目公演が並んでいる。

 その他、シュトゥットガルト歌劇場のプーランク「カルメル派修道女の対話」やベルリン州立歌劇場のオッフェンバック「ホフマン物語」(デュムソー指揮)、ヤナーチェク「利口な女狐の物語」(ラトル指揮)なども面白そうだが、ラトルは、オーケストラでも、シュターツカペレ・ベルリンとバイエルン放送響でマーラーの交響曲第2番「復活」を振るなど八面六臂の大活躍。メータ指揮ウィーン・フィルやウェルザー=メスト指揮チューリヒ・トーンハレ管などの注目公演もあるが、もはや書き切れない…。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)