トマス・コニエチュニー インタビュー(2)


 10月の来日公演で《ワルキューレ》を振るアダム・フィッシャーとは何度も共演を重ねており、お互いに信頼も厚い。
「ワーグナー指揮者として世界のトップですし、歌手のこともサポートしてくださる、とてもセンシブルな方です。新しい役をやるというのは歌手にとって大きなストレスですが、その上指揮者が難しい人だとストレスが倍増してしまうのです。フィッシャー氏は歌手にそのような負担をかける人ではないですし、大変良い協調関係が築けています。今回共演はしませんが、別の演目(《ナクソス島のアリアドネ》)で振られるマレク・ヤノフスキ氏とは《ワルキューレ》をレコーディングしました。彼も素晴らしい指揮者ですね」

自身も気に入っているというヴォータンの写真(ウィーン国立歌劇場公演より) Photo:Wiener Staatsoper_Michael Poehn

自身も気に入っているというヴォータンの写真(ウィーン国立歌劇場公演より)
Photo:Wiener Staatsoper_Michael Poehn

 ヴォータンに扮した自身が宣伝用のヴィジュアルに使われているチラシを見て、大喜びの表情。怒りに目を見開いた迫力満点のヴォータンは、舞台だけでしか見せないコニエチュニーの特別な顔のようだ。
「確か3年前くらいの撮影だったと思いますが、この写真は好きです。ウィーンのプロダクションは演出も素晴らしく、歌手にとって物語の中に自然に入り込んでいけるものを作っています。最近ヨーロッパでは演出家主導型のプロダクションも多いのですが、中には歌手や音楽のことをまったく考えないで、演出家のエゴだけで出来ているものもあります。私自身、演出家志望でしたから、あまりにオペラの本質とかけ離れた演出は受け入れられないのです。私が考えるヴォータンは、まず世界最高の権力者であり、そんなに「いい人」ではない(笑)。ワルキューレの母親たちはみんな違うわけですからね。女を飽きさせない男で、ワーグナーの夢が詰まっています。ブリュンヒルデに対する残酷な仕打ちは、私自身も父親ですからとても感情が入ります。ヴォータンは本当に、私の人生そのものなのです」
 4月には、「東京・春・音楽祭」で演奏会形式の《ジークフリート》(マレク・ヤノフスキ指揮)でのアルベリヒと、ラフマニノフの歌曲などのリサイタルを行ったコニエチュニー。世界最高のアルベリヒ歌手と呼ばれる彼の「真の姿」が、11月には明らかになるだろう。
(インタビュー・文:小田島久恵 フリーライター)


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トマス・コニエチュニー インタビュー(1)

R.ワーグナー作曲
《ワルキューレ》
指揮:アダム・フィッシャー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
11月 6日(日) 3:00p.m.
11月 9日(水) 3:00p.m.
11月12日(土) 3:00p.m.
会場:東京文化会館

■予定される主な出演
ジークムント:クリストファー・ヴェントリス
ジークリンデ:ペトラ・ラング
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュテンメ
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
*表記のキャストは2016年4月8日現在の予定です。

■入場料(税込)
S=¥67,000 A=¥61,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000
●全公演のS〜D券
6月4日(土) 10:00より一斉発売開始
NBSチケットセンター:03-3791-8888

ウィーン国立歌劇場2016年日本公演公式HP
http://www.wien2016.jp/