ナクソス島のアリアドネ

 ワーグナー以後最大の作曲家と呼ばれているリヒャルト・シュトラウス。《ばらの騎士》での大成功を得た後、その作風は保守的な傾向を強めたといわれています。《ナクソス島のアリアドネ》も、モーツァルト的なオペラといわれることがありますが、いえいえいえ、ここにはモーツァルト的なものとワーグナー的なものが統合された、新しい独自の試みがあります。
 実はこのオペラの部分は、はじめにモリエールの名喜劇《町人貴族》の劇中で上演されるオペラとして作られ1912年にシュツットガルトで戯曲とともに初演されました。しかし、3幕の戯曲の後にオペラという奇抜なアイディアは好評を得ることができませんでした。そこで、R.シュトラウスと台本作家のホーフマンスタールは、オペラ《ナクソス島のアリアドネ》を、劇の付属ではなく、独立した作品へと改訂します。短い〈プロローグ〉が付けられたオペラ改訂版が、今日のオペラ《ナクソス島のアリアドネ》。1916年にウィーン国立歌劇場の前身であるウィーン宮廷歌劇場で初演されました。今年はこのオペラ版初演からちょうど100年にあたります。
 
 ウィーンの富豪が客のもてなし用に、邸内でオペラを見せようと考えます。とはいえこの富豪はオペラ愛好家ではありません。“成り金”趣味というか、上流の仲間入りをするための方策というわけです。それゆえ、「悲劇オペラと世俗的な喜劇を同時に上演せよ」をなどという無茶ぶりを発するというわけです。
 オペラ《ナクソス島のアリアドネ》では、前半の〈プロローグ〉では、この日の出しものであるオペラ開幕までのすったもんだが表され、後半では件のオペラ上演となります。
 作品の最大の特徴は、指揮のマレク・ヤノフスキも言うように、「悲劇」と「喜劇」が同時に進行することです。二つの相反する要素は、一つの愛に固執するアリアドネと、過ぎたことにこだわらないツェルビネッタによって表されますが、その“根っこ”にあるのは「愛のすがた」なのです。


《ナクソス島のアリアドネ》
作曲:R.シュトラウス
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:マレク・ヤノフスキ

■公演日程
10月25日(火) 7:00p.m.
10月28日(金) 3:00p.m.
10月30日(日) 3:00p.m.
会場:東京文化会館

■予定される主な出演
プリマドンナ/アリアドネ:グン=ブリット・バークミン
ツェルビネッタ:ダニエラ・ファリー
作曲家:ヴェッセリーナ・カサロヴァ

*表記のキャストは2016年4月8日現在の予定です。

■入場料(税込)
S=¥63,000 A=¥58,000 B=¥53,000 C=¥48,000 D=¥32,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000

Photo:Wiener Staatsoper/Michael Poehn

Photo:Wiener Staatsoper/Michael Poehn