ヴォータンは私の人生そのものです
ウィーン国立歌劇場の日本公演では初の上演となる《ワルキューレ》でヴォータンを演じるドラマティック・バス・バリトンのトマス・コニエチュニー。劇的な表現力とパワフルな声量を誇り、力強い存在感を放つカリスマ・タイプの歌手だが、故国ポーランドでは演劇を学び、俳優として映画やテレビで活躍していたという一風変わったキャリアを持つ。有名映画監督のもとで演技指導を受ける一方で、ワルシャワのフレデリック・ショパン音楽アカデミーで声楽を学び、ドレスデンの音楽大学でも修練を積んだ。物静かな雰囲気の中に、秘めた情熱を感じさせる人物だ。
ワーグナー歌手として最初にセンセーショナルな成功を収めたのは《ニーベルングの指環》のアルベリヒ役だった。日本でも演奏会形式でのアルベリヒの熱演が大絶賛されたが、この成功は本人にとっては「とても皮肉なもの」だったという。
「オペラ歌手としてデビューして3年目の年に、レパートリーを広げたくて小さい劇場で色々な役を歌っていたんです。ハンブルクでジークフリート・シュヴァーク氏の指導を受け、ワーグナー向きの声だと言われたときは嬉しかった! 勇気を得て、ヴォータンを演じる準備を着々と進めていきました。その頃、ウィーンのホーレンダー総裁から声をかけていただいて、面白いプロダクションがあるからオーディションを受けてみないかと誘われ、私はすっかりヴォータンとして受けるつもりだったんです。しかし「既にヴォータンは決まっているのでアルベリヒを歌ってみる気はないか?」と言われてしまって…‥。そこから初めてアルベリヒを勉強し始めました。もともとヴォータンを歌うつもりでワーグナーの世界に入っていったのが、何故かアルベリヒとして有名になってしまった。アルベリヒももちろん興味深いですが、ヴォータンは私の人生そのものです。両方の役を演じることで壮大なストーリーを把握できるのは素晴らしいことです」
(インタビュー・文:小田島久恵 フリーライター)
インタビュー(2)につづく
R.ワーグナー作曲
《ワルキューレ》
指揮:アダム・フィッシャー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
11月 6日(日) 3:00p.m.
11月 9日(水) 3:00p.m.
11月12日(土) 3:00p.m.
会場:東京文化会館
■予定される主な出演
ジークムント:クリストファー・ヴェントリス
ジークリンデ:ペトラ・ラング
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュテンメ
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
*表記のキャストは2016年4月8日現在の予定です。
■入場料(税込)
S=¥67,000 A=¥61,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000
●全公演のS〜D券
6月4日(土) 10:00より一斉発売開始
NBSチケットセンター:03-3791-8888
ウィーン国立歌劇場2016年日本公演公式HP
http://www.wien2016.jp/