10月に開幕するウィーン国立歌劇場日本公演で《フィガロの結婚》の指揮をとるリッカルド・ムーティの近況レポート2回目では、次世代の音楽家たちに思いを向けるマエストロ自身の言葉などが紹介されています。
第二部はボイト作「メフィストフェレ」のプロローグの演奏で観客を圧倒した。オーケストラ、合唱、児童合唱、バンダの総勢300名の熱演に会場は興奮の渦と化した。滅多に味わうことができないほどの感動は観客ばかりでなく、舞台上の演奏者たちも同じだったに違いない。同じ譜面台を分け合った日本とイタリアの奏者たちの満足げな笑顔が晴れやかだった。
ムーティは還暦を過ぎた頃から指揮活動と共に音楽普及のための活動を盛んに行うようになった。リハーサルを公開することはもちろん、自身がピアノを弾きながらのオペラ作品レクチャーはテレビでも放送され、音楽に興味がなかった人々にも音楽鑑賞、特にオペラの楽しみを伝えようと努めている。また、若い音楽家たちの育成を目的としたオーケストラを創設し、盛んな演奏活動をしている。そのオーケストラであるケルビーニ管は音楽学校を卒業して、オーディションに合格した18歳から30歳までの優秀な奏者で編成されている。
「私が若い頃は周りに偉大という言葉では充分ではないほどの超偉大な演奏家が沢山いました。幸運なことに私は指揮者もピアニストもヴァイオリニストも歌手も音楽史に残るような素晴らしい演奏家に囲まれていました。そして彼らから色々と大切なことを学ぶことができました。私が体験して身に付けてきたことを若い演奏家たちに伝えておかなければならないと思うようになったのです」
ムーティのこの思いが2015年にイタリアン・オペラ・アカデミーを発足させることになったのである。
7月23日はムーティのレクチャーでアカデミーの初日が開いた。「椿姫」の序曲からフィナーレまで、音楽と言葉の両面から作品を解説していくムーティの話しぶりはユーモアにあふれ、誰もが興味を抱くような話術に時の経つのも忘れて楽しむことができた。しかし、その内容は奥が深く、何度も見聞きして知っているつもりの「椿姫」の新しい発見になった人も多かったと思う。
シカゴ響の音楽監督として君臨し、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルなど世界の名立たるオーケストラとの共演で活躍するマエストロ・ムーティだが、無名の若い音楽家たちの育成にかける情熱も紹介され、評価されるべきだと心から思う。
文:田口道子(在ミラノ、演出家)
■《フィガロの結婚》
作曲:W.A.モーツァルト
演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ
■公演日程
11月10日(木) 5:00p.m.
11月13日(日) 3:00p.m.
11月15日(火) 3:00p.m.
会場:神奈川県民ホール
■予定される主な出演
アルマヴィーヴァ伯爵:イルデブランド・ダルカンジェロ
伯爵夫人:エレオノーラ・ブラット
フィガロ:アレッサンドロ・ルオンゴ
スザンナ:ローザ・フェオーラ
ケルビーノ:マルガリータ・グリシュコヴァ
*表記のキャストは2016年4月8日現在の予定です。
■入場料(税込)
S=¥65,000 A=¥60,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000
ウィーン国立歌劇場2016年日本公演公式HP
http://www.wien2016.jp/
【チケット発売情報】
●全公演のS〜D券
第2次発売
9月3日(土) 10:00より
NBSチケットセンター:03-3791-8888