アダム・フィッシャーのインタビューを紹介する3回目は、《ニーベルングの指環》四部作のなかで最も好きな作品が聞き出されるほか、指揮に対する考えが語られています。
(ウィーン国立歌劇場月刊広報誌より 聞き手:オリヴァー・ラング)
――《指環》の四作品のなかで、とりわけどの作品を評価されますか?
フィッシャー:私に言えるのは、大好きな部分をいくつも挙げられるということです。それは公正を欠くことかもしれません。それ以外の箇所がそれほど素晴らしくないという意味でないのはもちろんです。
――公正を欠いていただくとしましょう。どの部分が挙げられますか?
フィッシャー:先ほども言いましたが「死の告知」(《ワルキューレ》)。あるいは「森のささやき」(《ジークフリート》)。これは素晴らしく演奏できます! 「葬送行進曲」(《神々の黄昏》)。《指環》全体が素晴らしい部分にあふれています。
――あなたは《指環》を暗譜で指揮されるのですか?
フィッシャー:私には暗譜で指揮できませんし、したくもありません。私は暗譜で指揮することを少しだけ実践しましたが、やめてしまいました。もちろん、暗譜で指揮することができれば、目をよりよく使えるという利点はあります。しかし実際のところ両目は、楽譜を一瞥して、歌手たちは器楽奏者たちをじっくり見るためだけのものではないのです。そうしたやり方はとても目を疲れさせるので、休憩のあいだずっと休ませる必要が生じます。それとは別の流儀があるのです。チェスの偉大な名人たちは試合毎に棋譜を書きとめているというのを、私は読んだことがあります。それでなくともあらゆる手が名人たちの頭の中には入っています。彼らは頭脳をちょっとのあいだ解放するためにそうするのです。ちょうど私にとって楽譜がそういうものにあたります。私はときどき楽譜を見る必要があります。そうして私は自分を回復させるのです。
――暗譜で指揮するのはかまわないわけですね?
フィッシャー:正しく実行されるなら、もちろんです。それが虚栄心からのみおこなわれるとしたら、単純に愚かなことです。私も指揮者として駆け出しのころにやってしまいましたが……。
――楽譜をさっと見るのは、何を求めてなのでしょうか? 瞬間的にどのくらい把握できるものなのですか?
フィッシャー:私は楽譜をよく知っていますから、個々の小節を見ることで、残りの部分は記憶から取り出すことができます。たとえばチューバの楽譜を見れば、自動的にヴァイオリンの演奏やピッコロのすることがわかります。つまり記憶を補助するためのものなのです。
R.ワーグナー作曲
《ワルキューレ》
指揮:アダム・フィッシャー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
11月 6日(日) 3:00p.m.
11月 9日(水) 3:00p.m.
11月12日(土) 3:00p.m.
会場:東京文化会館
■予定される主な出演
ジークムント:クリストファー・ヴェントリス
ジークリンデ:ペトラ・ラング
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュテンメ
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
*表記のキャストは2016年4月8日現在の予定です。
■入場料(税込)
S=¥67,000 A=¥61,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000
ウィーン国立歌劇場2016年日本公演公式HP
http://www.wien2016.jp/
●2演目・3演目セット券 [S, A, B券]
NBS WEBチケット&電話受付
4月23日(土)10:00より
NBSチケットセンター:03-3791-8888
●全公演のS〜D券
一斉発売開始
6月4日(土) 10:00より