リッカルド・ムーティ〜ロング・インタビュー(1)

 リッカルド・ムーティの3月の来日時に、演出家でマエストロの著書の翻訳なども手がける田口道子氏により行われたインタビューを、3回にわたりご紹介します。

 1回目は、「《フィガロの結婚》は私自身の音楽人生にとって重要な作品」という言葉など、作品への思いがうかがわれます。

リッカルド・ムーティ

リッカルド・ムーティ

 3月11日から17日まで「東京・春・音楽祭」のコンサートのために来日したマエストロ・ムーティ。実は来日の5週間前に大腿骨を骨折、手術という予測もしない事故に見舞われて、2月のシカゴ響の定期も3月に予定されていたパリでのコンサートもキャンセル。でも、東京でのコンサートは絶対にキャンセルしないとおっしゃり、毎日リハビリに励み、無事元気に来日された。空港に用意されてあった車椅子も使わず、杖を使用することもなく真っ直ぐに歩いて空港ロビーに現れた姿に私も安堵した。東京におけるシカゴ響のあの素晴らしい演奏の記憶も新しいが、アジア・ツアーを終えてイタリアに戻って以来1カ月以上も指揮活動を休んでいたマエストロの復帰第一番目のコンサートである上に、初顔合わせの合同オーケストラの指揮という大きな課題も抱えて、マエストロのスケジュールは午前午後とリハーサルでいっぱいの状態だったため、取材は一切お断り。無事にコンサートが終わった18日、空港へ出発前のお時間をいただいてお話を伺うことができた。
(インタビュー・文:田口道子/オペラ演出家)
ジャン=ピエール・ポネル演出《フィガロの結婚》より Photo:Wiener Staatsoper / Axel Zeininger

ジャン=ピエール・ポネル演出《フィガロの結婚》より
Photo:Wiener Staatsoper / Axel Zeininger

◆《フィガロの結婚》は多くの劇場での上演のほかに録音も録画もなさっていますが、ウィーン国立歌劇場との共演ということに特別な感情はありますか?

ムーティ:ウィーン国立歌劇場との共演ということはウィーン・フィルとの共演ということでもあります。ウィーン・フィルとは46年もの長い間、毎年コンサートをしています。日本に初めて来たのも1975年のウィーン・フィルとのコンサートでした。ウィーン国立歌劇場には1973年に《アイーダ》でデビューして、その後もニュープロダクションで色々な作品を指揮しましたよ。特にアン・デア・ウィーンでのダ・ポンテ台本のモーツァルト三部作の成功は嬉しい思い出として心に残っています。ウィーン・フィルと録音したモーツァルトの作品は《フィガロの結婚》《コシ・ファン・トゥッテ》《ドン・ジョヴァンニ》のダ・ポンテ台本三部作の他にも《魔笛》《皇帝ティートの慈悲》などがあってどれも思い出深いです。ウィーン国立歌劇場との共演は第二の故郷に帰るような懐かしい気分です。

◆《フィガロの結婚》にまつわるエピソードなどはありますか?

ムーティ:特別なエピソードというものはありませんが、特に愛着を持っている作品です。《フィガロの結婚》は私が初めて取り組んだモーツァルトのオペラなのです。フィレンツェの首席指揮者になったばかりのことで、アントワーヌ・ヴィテツというフランスの演出家の演出でした。その後、1981年にスカラ座で演出家ジョルジョ・ストレーレルと共演しました。ストレーレルとの出会いは私にとって作品に向かい合う意識を高める大きなきっかけになりました。この《フィガロの結婚》を聴いてマエストロ・カラヤンが1982年にザルツブルクで《コシ・ファン・トゥッテ》を指揮しないかと誘ってくださったので、私自身の音楽家人生の歴史にとっては大変重要な作品なのです。ウィーン国立歌劇場のプロダクションはジャン=ピエール・ポネル演出のとても分かり易い舞台です。素晴らしいプロダクションに恵まれたことはとても幸運だったと思っています。

[その(2)に続く]

《フィガロの結婚》
作曲:W.A.モーツァルト
演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ

■公演日程
11月10日(木) 5:00p.m.
11月13日(日) 3:00p.m.
11月15日(火) 3:00p.m. 
会場:神奈川県民ホール

■予定される主な出演
アルマヴィーヴァ伯爵:イルデブランド・ダルカンジェロ
伯爵夫人:エレオノーラ・ブラット
フィガロ:アレッサンドロ・ルオンゴ
スザンナ:ローザ・フェオーラ
ケルビーノ:マルガリータ・グリシュコヴァ

*表記のキャストは2016年3月22日現在の予定です。

■入場料(税込)
S=¥65,000 A=¥60,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000


ウィーン国立歌劇場2016年日本公演公式HP
http://www.wien2016.jp/

【チケット発売情報】
●2演目・3演目セット券 [S, A, B券] NBS WEBチケット&電話受付

4月23日(土)10:00より
NBSチケットセンター:03-3791-8888


●全公演のS〜D券
一斉発売開始
6月4日(土) 10:00より