《ゲロンティアスの夢》とは?

エドワード・エルガー(1853〜1934)

 エドワード・エルガーが通称「エニグマ(謎)変奏曲」を発表し、イギリス国内においても国際的にも注目を集めたのが1899年のこと。その時点で彼は42歳であり、遅咲きの才能として脚光を浴びた。
 1900年10月にイギリスのバーミンガムで初演された《ゲロンティアスの夢》は、エルガーの名声を確実なものにした重要な一作である。

ジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿

 イギリス本国においては「必ず聴くべきエルガーの作品」の筆頭に挙げられ、名だたる指揮者やオーケストラ、さらにはアマチュア合唱団も取り組むほど親しまれている。宗教的な題材、しかも「死と魂の審判」という命題を軸にした精神的にも深みのある内容ゆえ、気軽に聴ける作品ではないかもしれない。しかし、エルガーが心酔してテキストに選んだジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿(カトリック教会においては教皇・法王に仕える最高顧問)による長編詩、そしてその物語を音楽神秘劇のようにして聴かせるエルガーの才能は、必ずや聴き手に深い感動を与えることだろう。  
 作品に登場するのは、自らの死に際して神へ魂を委ねようとするゲロンティアス、彼を神の国へと送り出す司祭、死後の世界においてゲロンティアスの魂を導く天使、ゲロンティアスを迷わせる悪魔たち、神のもとでゲロンティアスの魂を招き入れる苦悩の天使、など。こうしたキャラクターたちが、ワーグナーの舞台神聖祝典劇《パルジファル》にも似た崇高な雰囲気を作り上げていく。
 この大作が初演された1900年は、マーラーが交響曲第4番を書き上げ、ドビュッシーはオペラ《ペレアスとメリザンド》の完成を急いでいた頃。前年にはリヒャルト・シュトラウスにとって最後の交響詩となった「英雄の生涯」が初演され、シェーンベルクが耽美的な「浄められた夜」を作曲している。これを機会に、エルガーをイギリス音楽という枠に収めず、広く音楽史の中で再評価するのも一興だろう。
(文=オヤマダアツシ)


【公演情報】

第662回定期演奏会
2018.7/14(土)18:00 サントリーホール

第66回川崎定期演奏会
2018.7/15(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

●曲目
エルガー:オラトリオ ゲロンティアスの夢 Op.38

●出演
ジョナサン・ノット(指揮)
マクシミリアン・シュミット(テノール)
サーシャ・クック(メゾソプラノ)
クリストファー・モルトマン(バリトン)

合唱:東響コーラス
合唱指揮:冨平恭平

●チケット
サントリーホール

S席 A席 B席 C席
¥10,000 ¥8,000 ¥6,000 売切

ミューザ川崎シンフォニーホール

S席 A席 B席 C席
¥10,000 ¥8,000 ¥5,000 ¥4,000

 

問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター 044-520-1511(平日10:00〜18:00)
TOKYO SYMPHONYオンラインチケット http://tokyosymphony.jp