クリストファー・モルトマン(バリトン/司祭・苦悩の天使)

(C) Pia Clodi

ーーエルガーの《ゲロンティアスの夢》を歌われた、あるいは聴かれた経験はありますか?もし歌った(聴かれた)ことがあればその時の印象をお話しください。体験された指揮者、共演者(出演者)もお教えください。

 私が最初に《ゲロンティアスの夢》の演奏に参加したのは、1993年のパリでした。ですから、この作品に対して25年の経験があるといえます。ただ、《ゲロンティアスの夢》は一番好きなオラトリオでしたので、それ以前からよく知っていたのです。最後にこの作品を演奏したのは、イギリスのリンカンシャーにあるルースという私の故郷の町で、同地の合唱協会と一緒でした。この作品を歌えるのは大変名誉なことだと考えています。

ーー《ゲロンティアスの夢》はエルガーの「3大オラトリオ」のひとつとして知られていますが、この作品の魅力はどのようなところにあるのでしょうか?

 《ゲロンティアスの夢》は、伝統的なオラトリオというよりも、オペラに近いと思います。信じられないほどドラマティックで、もはや映画的な構造をしていると言ってもよいでしょう。そして、ジョン・ヘンリー・ニューマンによる非常に刺激的なテキストとエルガーの音楽が完全に融合しています。また、聴衆の宗教感、信仰のあるなしにかかわらず楽しめる作品です。

ーーあなたの母国において、《ゲロンティアスの夢》は広く知られた作品でしょうか。それとも現在でも知られざる作品なのでしょうか?

 イギリス音楽の傑作とされていて、イギリスではよく演奏されるものの、もっと世界中で演奏されるべきだと思います。ですから、東京でこの作品が演奏されるのは素晴らしいことです。

ーーエルガーの《ゲロンティアスの夢》に、リヒャルト・ワーグナーの作品との類似性を指摘する向きがありますが、歌う側としてどうお感じになりますか?

 《ゲロンティアスの夢》が非常にオペラ的だと前述しましたが、ワーグナー同様にエルガーは、「存在」「人生」「死」とこれらの意義という、大きなテーマを取り上げています。ワーグナーはこれらを神話と宗教というレンズを通して表現し、エルガーはこれらをカトリックの観点から描きました。しかし、どちらの作曲家の作品に共通するのは、壮大さと感情の深さです。

ーーエルガーと同じく英国出身のマエストロ、ジョナサン・ノット氏とこの作品を共演するにあたり、抱負をお聞かせください。

 またマエストロ・ノットと演奏できるのは素晴らしいことですし、この典型的なイギリス作品である《ゲロンティアス》が英国人によって指揮されるので、感動的なパフォーマンスになるに違いありません。また、東響と東響コーラスの皆さんが聴衆と同じくらいにこの作品の演奏を楽しめることを願っています。私にとって、自国の偉大な音楽作品を擁護し、また日本に伝えるアンバサダーとなれることをうれしく思います。

(C) Pia Clodi


【Profile】
クリストファー・モルトマン(バリトン/司祭・苦悩の天使)

イギリス出身。ウォーリック大学で生化学を専攻。その後英国王立音楽アカデミーで学ぶ。1997年カーディフ国際コンクール歌曲賞を受賞して以来、シューベルトとマーラーの歌曲をはじめとする歌曲演奏が国際的にも高く評価されている。オペラの分野でも《ドン・ジョヴァンニ》タイトルロールが世界的に知られており、ロンドン・ベルリン・ミュンヘン・ケルン・ザルツブルク・アムステルダム・北京・シカゴ・ニューヨーク・エジンバラ等世界中で歌っている。近年ではヴェルディの作品にも取り組んでおり、《ドン・カルロ》ロドリーゴ、《シモン・ボッカネグラ》タイトルロール、《イル・トロヴァトーレ》ルーナ伯爵等、続々とレパートリーを拡げている。バロックオペラからブリテンまで幅広いレパートリーを持ち、メトロポリタン歌劇場、ウィーン国立歌劇場、ベルリン州立歌劇場、バイエルン州立歌劇場、ザルツブルク音楽祭等、世界の一流歌劇場・音楽祭に出演している。録音も数多く、ジョン・コリリーアーノ《ヴェルサイユの幽霊》(ロサンゼルス・オペラ)は第59回グラミー賞最優秀オペラ録音賞を受賞した。2018年5月上映予定のMETライブビューイング《コジ・ファン・トゥッテ》ではドン・アルフォンソで出演している。


【公演情報】

第662回定期演奏会
2018.7/14(土)18:00 サントリーホール

第66回川崎定期演奏会
2018.7/15(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

●曲目
エルガー:オラトリオ ゲロンティアスの夢 Op.38

●出演
ジョナサン・ノット(指揮)
マクシミリアン・シュミット(テノール)
サーシャ・クック(メゾソプラノ)
クリストファー・モルトマン(バリトン)

合唱:東響コーラス
合唱指揮:冨平恭平

●チケット
サントリーホール

S席 A席 B席 C席
¥10,000 ¥8,000 ¥6,000 売切

ミューザ川崎シンフォニーホール

S席 A席 B席 C席
¥10,000 ¥8,000 ¥5,000 ¥4,000

 

問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター 044-520-1511(平日10:00〜18:00)
TOKYO SYMPHONYオンラインチケット http://tokyosymphony.jp