ワーグナーが《タンホイザー》に取り入れた伝説の2つ目は、「ヴァルトブルクの歌合戦の伝説」。
この伝説はテューリンゲン州アイゼナッハの山上に建つヴァルトブルク城で行われた歌合戦にまつわる伝説です。
ときは1206年、テューリンゲン方伯ヘルマン1世を褒める歌を競う歌合戦で6人の宮廷歌人が競う。この歌合戦、敗者は命を落とすことになっている真剣勝負。ところが歌人の一人ハインリヒ・フォン・オフターディンゲンだけはオーストリア公を称え、敗者として死を迫られる。この後の展開については、ハインリヒが領主の妃に庇護を求め生きのびるとか、窮地のなかで魔術師を呼び出し、魔法を使って勝利を得ようとするなど、いくつかがある。
オペラの第2幕、歌合戦の場面で、禁断の愛を称えるタンホイザーにビッテロルフが剣を向けるというのも、この伝説に基づくものというわけですね。
もう一つ、この伝説がオペラ《タンホイザー》に直結しているのは、オペラのなかでタンホイザーは「ハインリッヒ」という名前だということ。オペラのなかで彼が「タンホイザー」と呼ばれることはありません。ちなみに、歌合戦で競うほかの5人の名も、オペラではそのまま役名に用いられています。宮廷歌人として伝説となっていたタンホイザーを、歌合戦の主人公であるハインリヒ・フォン・オフターディンゲンとしたのは、ワーグナーの創造の産物なのです。
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●知っておきたい “タンホイザー”のこと(1)
【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール
■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ
※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/