ドイツは世界一の「歌劇場大国」と言われ、各州それぞれに立派な劇場をもっています。なかでも17世紀半ばに起源をもつバイエルン国立歌劇場は、ドイツで最初のオペラ専用劇場であり、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場と並ぶヨーロッパ三大歌劇場の一角として、名実ともにドイツの「ナンバーワン」歌劇場として君臨しています。ミュンヘンのオペラの歴史は数々のオペラ史に特筆大書される出来事とともにあります。18世紀に若きモーツァルトの名を決定的に世に知らしめ、19世紀にはルートヴィヒ2世の庇護のもと初演されたワーグナー作品によって、ミュンヘンはヨーロッパ音楽界の中心地となりました。現在、バイエルン国立歌劇場では毎年初夏の約1か月間「ミュンヘン・オペラ・フェスティバル」が開催されますが、このフェスティバルは1875年に主にモーツァルトとワーグナーの作品を上演することを意図してスタートしたものです。モーツァルトとワーグナーのオペラこそ、この歌劇場の2枚看板なのです。
モーツァルト作曲『魔笛』がミュンヘンで初めて上演されたのは1793年。以来、この地で特別な作品であり続けてきました。エヴァーディング演出の舞台が長く愛され続けているのは、このプロダクションがバイエルン国立歌劇場の“特別な誇り”を担っているからにほかなりません。
また、“ワーグナーの中心地”と認められていた時代をもつミュンヘンに、名ワーグナー指揮者の名が並んでいるのは当然のこと。この名ワーグナー指揮者たちの系譜に、すでに名を連ねているのが現音楽総監督のキリル・ペトレンコです。すでに《ニーベルングの指環》をはじめ、ワーグナー作品での大きな成功を収め、瞬く間にヨーロッパの音楽界でナンバーワンの実力者と認められるまでになりました。バイエルン国立歌劇場の音楽総監督に就任して5シーズン目を迎え、歌劇場やオーケストラとの信頼も安定したタイミングでの日本公演は、新たな伝説がすでに始まっていることを実感させます。ベルリン・フィル次期音楽総監督でもあるキリル・ペトレンコの日本デビューに、オペラ、音楽ファンの期待はいや増すばかりです。
【公演日程】
《魔笛》
作曲:W.A.モーツァルト
演出:アウグスト・エヴァーディング
指揮:アッシャー・フィッシュ
9月23日(土・祝) 3:00p.m.
9月24日(日) 3:00p.m.
9月27日(水) 6:00p.m.
9月29日(金) 3:00p.m.
会場:東京文化会館
■予定される主な出演
ザラストロ:マッティ・サルミネン
タミーノ:ダニエル・ベーレ
夜の女王:ブレンダ・ラエ
パミーナ:ハンナ=エリザベス・ミュラー
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジ
パパゲーナ:エルザ・ベノワ
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール
■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ