リュドミラ・モナスティルスカ “ザルツブルク復活祭音楽祭”でも大反響!

ザルツブルク復活祭音楽祭《カヴァレリア・ルスティカーナ》 中央:アンブロージオ・マエストリ(アルフィオ) 右:モナストリスカ(サントゥッツァ) Photo: Andreas J. Hirsch

ザルツブルク復活祭音楽祭《カヴァレリア・ルスティカーナ》
中央:アンブロージオ・マエストリ(アルフィオ) 右:モナストリスカ(サントゥッツァ)
Photo: Andreas J. Hirsch

 ヨーロッパの春の一大フェスティヴァル、カラヤンが創設した“ザルツブルク復活祭音楽祭”で、クリスティアン・ティーレマンが率いる2015年度のハイライトがマスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》&レオンカヴァッロ《道化師》だった。このダブル・ビルを一人で歌い通したヨナス・カウフマンに焦点を当てたプロダクションではあったのだが、ここでひときわ話題を集めたのがリュドミラ・モナスティルスカだ。前者のサントゥッツァが彼女の役柄で、通常メゾソプラノに割り振られる役柄をソプラノの彼女が歌って大反響を起こしているのには、それなりの理由がある。
 ウクライナ出身のモナスティルスカは強靭な声帯から発せられる豊麗な声と同時に、リリコからスピントの役柄までをカヴァーできる卓越したテクニックと、ゆたかな表現力で近年急速に評価が上がっている歌手だ。加えて充実した低音域をあわせ持つことから、今回のサントゥッツァで予想を越える成果をあげ、彼女のキャパシティの大きさが証明されることになった。愛と嫉妬がせめぎ合うシチリア女の情念を、あますところなくステージに反映させて、ザルツブルク祝祭大劇場で絶賛の嵐を巻き起こしたのだ。このときは、ティレマンが彼女をヴェルディ〈レクイエム〉にも起用していることを付記しておこう。
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 9月に予定されている“英国ロイヤル・オペラ”日本公演の《マクベス》で、モナスティルスカがマクベス夫人役に起用されているのは、じつに当を得たロイヤル・オペラ側のキャスティングだ。ヴェルディ初期の作品では、往々にしてドラマティックな重い声で敏捷(びんしょう)なコロラテューラ楽句を歌わなければならない至難な、いわゆるアジリタ技法がソプラノに要求されていて、なかでもマクベス夫人役は、その最たるものなのだ。このため同役を十全に歌うことができる歌手がほとんど居ないのが現状だが、やはりヴェルディによる同趣向の作品である《ナブッコ》のアビガイッレや《アッティラ》のオダベッラをロンドンやベルリン他で歌って、現在、この領域における第一人者としての評価を確立しているモナスティルスカこそマクベス夫人には最適であり、期待が膨らむ一方だ。
 ソプラノのレパートリー中、歌唱力、表現力ともに大きなスケールが問われる《アイーダ》やプッチーニ《トスカ》をも、すでにスカラ座やメトロポリタン・オペラで成功させているモナスティルスカだから、ついにウィーンも陥落。16年3月に《アイーダ》でのデビューが決定して、モナスティリスカの世界制覇達成だ !!
(文:山崎 睦 在ウィーン、音楽ジャーナリスト)

◆モナスティルスカ演じるマクベス夫人の動画はこちらから