ヴィオレッタは私に幸運をもたらした役
ローマ歌劇場の《椿姫》で、ヴァレンティノ・ガラヴァーニによる素晴らしい衣裳に身を包み、華やかに、そして堂々たるヴィオレッタを演じるフランチェスカ・ドット。昨年10月の再演の合間にインタビューに答えてくれました。すでに数々の舞台で認められていますが、なおも美しい声で丁寧に歌い演じることに努め、常に深く追究していく真摯な姿勢がうかがわれます。ミラノ在住の田口道子さんによるインタビュー、3回に分けてご紹介します。ヴィオレッタはレパートリーの中で一番複雑な役。
声の表現の重要さと同時に自然な演技のためにはのめりこみすぎないようにすることも必要
ーーヴィオレッタ役は、すでにイタリア各地で歌っていらっしゃいますが、あなたのレパートリーにおいてどのような意味を持っていますか? またこの役を歌うにあたって最も重要に考えていることは?
ヴィオレッタは私のレパートリーの中では一番複雑な役です。それは幕ごとに完全に心境が変化していくからです。環境の変化と共に、声や歌い方も変わるし、演技にも影響してくるので、充分な勉強が要求されます。第1幕と第3幕とでは全然違う人物になっていますよね。第1幕では華やかな社交界で明るく振舞ってはいても、自分が病気であることを自覚していますから、陽気に振舞いながら病気と闘っているというように二面性を持っているのです。そこに、新しく『愛』という第三の要素が入ってきますから、益々複雑になっていきます。第2幕になると、愛のためにもっと生きたいという気持ちに覆いかぶさるようにアルフレードのお父さんとの対話があります。そして第3幕では死と向き合っています。この役は演技力が要求されていると思いますから、できるだけ現実的な演技で役作りをするようにしています。その演技がわざとらしいものであってはならないし、誰もが見ていて本当のように思えなければならないので、声の表現がとても重要になってきます。自分が役にのめり込みすぎては駄目なんです。役になりきっても、冷めていて自分をコントロールしていなければならないので緊張し通しです。私は動揺しやすいので自分の感情を押さえるのも大変なんです。
ヴィオレッタは歌手としてデビューして間もないころから歌うチャンスに恵まれました。本来ならたくさん経験を積んでから取り組む役だと思っていましたし、ヴィオレッタを歌うことはソプラノ歌手の夢というのが普通ですが、私はまだ歌手として歌い始めて3~4年ですから、今は舞台経験を積みながら成長できればと思っています。幸運なことにというか、幸運をもたらしてくれた役なので、とても親しみを感じています。歌い込めば歌い込むほど乗り越えるべき課題が生まれてくるので、表面的ではない深い勉強を続けるよう努力しています。
取材・文:田口道子
インタビューその2に続く
■公演情報
ローマ歌劇場2018年日本公演
《椿姫》
9月9日(日) 15:00
9月12日(水) 15:00
9月15日(土) 15:00
9月17日(月・祝)15:00
東京文化会館
指揮: ヤデル・ビニャミーニ
演出: ソフィア・コッポラ
美術: ネイサン・クロウリー
衣裳: ヴァレンティノ・ガラヴァーニ
照明: ヴィニーチョ・チェーリ
ビデオ: イゴール・レンツェッティ、ロレンツォ・ブルーノ
振付: ステファン・ファヴォラン
■出演
ヴィオレッタ・ヴァレリー: フランチェスカ・ドット
フローラ・ベルヴォワ: エリカ・ベレッティ
アルフレード・ジェルモン: アントニオ・ポーリ
ジョルジョ・ジェルモン: アンブロージョ・マエストリ
ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団
ローマ歌劇場バレエ団
※表記の出演者は2018年5月31日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。
■料金(税込)
S席¥54,000 A席¥47,000 B席¥40,000 C席¥33,000
D席¥26,000 E席¥19,000 F席¥12,000
学生券¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで2018.8/3(金)18:00より受付開始。