美しき空気感に満ちた“歌の殿堂”
今秋の日本公演を楽しみにしていただいている皆さまに、より一層期待を高めていただくために、《タンホイザー》プレミエ公演からご紹介していくシリーズ。今回は第2幕からピックアップします。
ご承知の通り第2幕は、ヴァルトブルクに戻って来たタンホイザーと彼を待ち続けていたエリーザベトの再会、そして歌合戦の場面です。
そもそもこのオペラは、2つの伝説をもとにワーグナーが創作したものですが、第2幕は、ヴァルトブルク城の歌合戦がもとになっていることは明らか。ワーグナーの庇護者として知られるルートヴィヒ2世は、自身のノイシュヴァンシュタイン城の中に、ヴァルトブルク城のそれを模して、いえ、それ以上に豪華な装飾をもった大広間をつくりました。
そうしたことも影響して、この作品が上演される際には、城のなかの豪華な大広間が舞台美術として用いられることも少なくありません。しかし、カステルッチ演出では、一切、重厚な装置は用いられません。それでいて、舞台は大広間の壮麗な雰囲気を醸し出す空気感に満たされます。その美しさのなかで静かに再会するエリーザベトとタンホイザー・・・。激情とは違う、たがいの深い想いを表す二人の傍で、エリーザベトへの想いを封じることを決意するウォルフラムが立つ姿も、清々しさを感じるほど美しいと感じます。この静かで穏やかな場面は、晴れやかな歌合戦の始まりを告げる大行進曲の華やかさと対比します。堂々たる音楽と輝かしい合唱に満ちたこの入場の場面は、このオペラの聴きものの一つ。ペトレンコ自ら、初日を迎える最後の最後までリハーサルを手がけた合唱の威力と冴え渡るオーケストラの響きに、すでに知っているとしても、この後に起こる“事件”のことを忘れて聴き惚れてしまうほどです。
歌合戦の場面は、ソリストたちの歌唱、合唱、そしてオーケストラが一体となって緊張感を最高潮へ!聴き応え、観応えたっぷりの第2幕、どうぞお楽しみに。
【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール
■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ
※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/