バイエルン国立歌劇場で上演されている作品のなかでも、“最長寿”プロダクションの一つである《魔笛》。ミュンヘンの人々に愛され続けている舞台に、日本公演ではそれぞれを当たり役とする歌手が登場します。
まずは男性陣からご紹介!
絶対的な存在感と説得力で迫るザラストロ
マッティ・サルミネン
フィンランド生まれのベテラン・バス、マッティ・サルミネン。その豊かな声量と堂々たる風貌は、まさにザラストロそのもの! ザラストロは、夜の女王に言わせれば“娘をさらった悪者”ですが、実は賢者にして平和をもとめる人格者。さらにこのザラストロ、夜の女王の夫の友人で、彼が亡くなるときに「全てを焼き尽くす七重の日輪」を渡されていたのです。夫亡き後、夜の女王はこの「日輪」を取り戻し、権力を得ようと躍起になります。そんな母親の元には置いておけないと、ザラストロはパミーナを保護したというわけ。懐の深さを感じさせる説得力ある歌唱は、サルミネンの本領発揮の役どころです。
現代最高のモーツァルト・テナーの呼び声を証明する王子
ダニエル・ベーレ
美声テノール、ダニエル・ベーレが国際的な注目を集めることとなったのは、ほかでもないタミーノ役でした。タミーノは、大蛇に追われて失神してしまうちょっと頼りない王子として登場しますが、囚われのパミーナ救出に向ける決意は強固。そして試練にも見事に打ち勝っていきます。“助けてくれ!”と登場する冒頭のほか、パミーナの肖像画に向かって愛を歌い上げるアリアでは叙情的な美しい声が聴かせどころに。ダニエル・ベーレは、2012年のウィーン・フォルクスオーパー日本公演《ウィンザーの陽気な女房たち》のフェントン役でも、伸びやかな美しい声で純粋な青年の恋心を歌いました。長身でイケメンなところも王子タミーノにぴったり!
歌も演技も抜群! パパゲーノは大の当たり役
ミヒャエル・ナジ
ハンガリーにルーツをもつバリトン、ミヒャエル・ナジの声楽キャリアはシュツットガルトの少年合唱団がスタート。ベルリン・コーミッシェオーパーでの活躍を経て、2006年からはフランクフルト・オペラに拠点を移し、モーツァルトからワーグナー、さらにロシア・オペラなど幅広いレパートリーで成功していますが、なかでもパパゲーノは最大の当たり役といえるでしょう。2013年にはバーデン・バーデンでラトル指揮ベルリン・フィルとの共演でも注目されました。パパゲーノは、全身を鳥の羽で装い、楽観的な性格でありながら臆病で強がりというキャラクター。感情をありのままに表現し、聴衆から親近感や笑いを誘うこの役には、歌唱力だけでなく演技力も要求されます。
【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《魔笛》
作曲:W.A.モーツァルト
演出:アウグスト・エヴァーディング
指揮:アッシャー・フィッシュ
9月23日(土・祝) 3:00p.m.
9月24日(日) 3:00p.m.
9月27日(水) 6:00p.m.
9月29日(金) 3:00p.m.
会場:東京文化会館
■予定される主な出演
ザラストロ:マッティ・サルミネン
タミーノ:ダニエル・ベーレ
夜の女王:ブレンダ・ラエ
パミーナ:ハンナ=エリザベス・ミュラー
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジ
パパゲーナ:エルザ・ベノワ